DENON DA-307 1978年 35000円
デンオンの多くのアームは取付位置、実効長、オーバーハングが共通でグレードアップが簡単にできる。古い2本アームの物を見るとDA-305とDA-307の2本使い等は良く見かける。1980年頃までは「プレーヤーを作る」のもそれほど珍しい事ではなかったのだ。
DA-307は機構的に特徴はあるもののオーソドックス、細身でスマートなデザイン。マグネット式のインサイドフォースキャンセラーは引っ張る事で指定値を変えることなくフリーにでき、針圧の調整は指定値で合わせたのちに少しずらす加減の目盛りがあるなど、実用的な工夫がされていて使いやすい。
デンオンの大ヒットフォノモーターDP-3000を使ったプレーヤーの純正装着品でもある。価格の35000円は1978年の物だが、1976年発売のDP-3750に純正装着されているので販売開始はその頃かもしれず、もしかすると発売当初はもっと安かった可能性も?
単品アームとしてはその後のAC-3000MCやEPA-500等の半額強、尖った仕様に対応する物ではなく標準的なカートリッジをそつなく生かす、というタイプだ。

学生時代、DP-1800のアームをアップグレードしようと当時販売開始されたばかりのカッコイイDA-307の購入を考えたことがあるが、結局プレーヤーの総入れ替えをしたので現役時代は入手せず。
中古で購入した大理石キャビネットのDP-3750でしばらくの間DA-307を使い、その時に使いやすさと音が気に入った。中古入手で使い、手放し、また欲しくなってガタ有を安価に買って修理した2本目を現在も使っている。

デンオンには言わずと知れたロングセラーカートリッジDL-103があり、これのローコンプライアンスで針圧2.5gへの対応が必要、そして一方で当時針圧2g以下が当たり前のMMカートリッジ、オルトフォンMC20に始まるMCのハイコンプライアンス化、そういう時代のアームだ。307は103に対応した(しなければならなかった)最後のアームともいえる。
1979年には自社のDL-303をはじめとする新世代MCへ対応したDA-401を発売、針圧調整範囲0-2.0gとありDL-103の呪縛から解き放たれたDA-401は市場での人気が高い。
最近も暫くDA-307を使っていたのだが今市場にゴロゴロ出回っている1980年頃の針圧1.5-2.0gのカートリッジを使うと良い音がする。
AC-3000MCにS字パイプが付いているので取り替えて同条件で比較するとカートリッジによってその差の大小はあるが傾向はある。
AC-3000MCに比べると音粒がやや大き目で輪郭が甘い、一方で音が程よく溶け合って優しい音ともとれる。聴く音楽に拠っても評価は変わるだろう。立ち上がりの良さを求めると不足を感じるかもしれないが、ボーカルや弦の音は綺麗だし静けさもある。なめらかで刺激音の無い良い音だと思う。
DA-307はその美しい外観と裏腹に安価だ。理由は2つあると考えている。
音の傾向
DL-103を使った時の音が特別な物ではないという事。それはそれで良い事で、人気のあるアレやソレと大差ない音なのに、と思うが。
放送局用の民生版といわれる前モデルDA-305はDL-103使うならこれでいいじゃんといういわば専用アーム。それと比べるとDA-307は繊細さや静かさは勝ると思うが、力感では柔らかに感じる。デンオン入門モデルDP-1700辺りに多用された品番無しのアーム(中古市場で人気が有る、海外に多数流れているようだ)が価格以上に良い出来で実効長も単品アームと変らず244mm、音はDA-305と大差ない(主観)、安いアームの方がDL-103の音を「らしく」聴かせてしまう。でも、このあたりのアームは繊細な表現は苦手で楕円針で透明感のある音のカートリッジを付けると全然生かせない。
音のどの部分を重視するのかで評価が変わるのだが、デンオンはDL-103という伝統を持つがゆえにそれ以外の部分が認められにくい、という事だと思っている。
そして、では103以外を使うにはどうか、という事ならデンオンならDA-401の方に行ってしまうのだろう。
支持部の劣化
価格が安い原因はこちらの方が大きいだろう。
アーム左右のミニチュアベアリングの取付穴への嵌め込みに樹脂を使った構造で、多分制振の為だろう。おそらくブチル系のゴムと推測しているが溶けるのだ。場合によってはベアリングの中にまで入り込みガチガチにへばりついているけれどガタがあるから一応動く、なんてものもある。初動感度の低下著しい状態で針飛びが凄い(笑)
私の物は分解し溶けた樹脂を掃除して組みなおしている。自分でメンテナンスを行うなら面倒なだけだが、修理を依頼するとなるとそれなりにコストがかかる。なので状態が解らないなら修理代を差し引いた金額で買わないと、となる。修理できる前提で安価に買う、は輸出目当てが多い様に思う。前述の安いアーム同様、海外では当時の日本製アームの質の良さが評価されているんだろう。
そのうち日本国内で見かけなくなっていくのかも。綺麗なアームなのに。
実は今回外してしまった。しばらくしたらまた使おう。