音遊び~オーディオのブログ

 ガレージで楽しむ古めのオーディオ

NIKKO Beta30 プリアンプ 小規模メーカーの面白さ

  NIKKO Beta30 プリアンプ 詳細不明

 

 お手頃価格を付けられて店頭に並んでいた中古プリアンプ。

 ボリュームノブを回した感触が気持ちよく「あー、好きだ」と思ったがスマホ検索ではあまりにも情報が少なく、わからない物は買わないという事でいったん保留。

 仕様を調べ始めたらオーディオ仲間が海外版のサービスマニュアルを見つけて送ってくれ、押しボタンスイッチ2列の見慣れないセレクターもなんとなく解ったので購入、と相成りました。

 

 NIKKOはこれまでに使ったことはなく、ブログに書くのも初めて。例によって後の方でダラダラ書きます。

 

 Beta30

 検索するとハイファイ堂の中古販売情報がいくつか見つかった他は個人ブログ等にわずかな情報があるだけで詳細な仕様はわからない。海外版サービスマニュアルが最も詳細な資料となる。

 何冊か持っている手持ちのHi-Fi STEREO ガイド で調べてみる。1981-1982版が一番近いと思ったのだが、記載されているのは前モデルともいうべきC-201/203で、これらは1970年代からのモデルだ。全巻持っているわけではなく間が空いて1985-1986版、すでにプリアンプの記載はない。

 海外サイトHi-Fi-Wikiでの情報では1982-1985年、280USドル850DMとなっている。当時の為替レート約240円とすると68000円といったところで、セパレートプリアンプとしてはローエンドだろう。1985-1989年、一般的な丸いツマミになったBeta50Ⅱというのが950DMとなっているが、この2機種のサービスマニュアルが1冊になっているので外観以外同等のマイナーチェンジと思われる。パワーアンプのAlpha、プリアンプのBeta、チューナーがGammaとシリーズ化して販売しているのだが、国内販売はしていない様で、ハイファイ堂の過去販売記事で輸出モデルと記載がある記事があった。

NIKKO BETA30 初期動作確認中

 音は出ました、という状態で購入。
 持ち帰って動作確認。音は出る。ガリは少々あったがガチャガチャやったら無くなる程度。
 外観もフロントパネル上部に1カ所小さなあたりがあり、天板の角が少し擦れている程度、年代を考慮すると上物の部類だろう。
 PHONO、TUNER、AUXとTAPE1系統、PUTOPUT1、何故か安物のケーブルが付きっぱなしのプロセッサー用のIN/OUT、それ以外の端子はくすんでいる。おそらく私の様に機材をあれこれ入れ替える事はなく、セットしてそのまま使っていたのだろう。

 解せないのはプロセッサーのIN/OUTを直結してある事だったがこれはフロントパネルのスイッチを弄り回したら解った。セレクターの位置によってはプリアウト出力が無くなるのだが、ここを直結するとぐるりと回って出力されるので、テキトーにスイッチを押した時に音が無くなる事が少なくなる。音質最優先ではなく、使わないから使い勝手の良い様にした、という事だな、見習おう(笑)

NIKKO BETA30 中身

 動作は問題なさそうなので天板を外してみる。しっかりした厚めの鉄板で好ましい。

 衝撃のシンプルさ!写真の基板右側の角はなんだよ!ヘッドフォン用とボリューム用の基板を折り取った痕跡なんだろうけどもう少し、こう、綺麗にさぁ、、、音質には関係ないってか。。。

 部品を観察。

 新品の様な使用感の無さ。

 イコライザーアンプ、電源の定電圧、ヘッドフォンアンプ、皆IC。おそらくはMC用ヘッドアンプとしてイコライザー手前にFETが2個ある。

 いやぁ、割り切りが凄い。IC化は良い事だからね。基盤のパターンもリード線も確実に少なくなる。

 感触の良いボリュームは4連で、この辺りの回路構成は前モデルの高級機からの流れだろう。私自身は良く解っていないけど、フラットアンプの入出力両側にボリュームを入れる回路構成で実用上のS/N比を良くするらしい。

 構成している部品は見たところ標準的な物ばかりで、一番高価なのは4連ボリュームだと思う。

 使っているオペアンプICは2043D、おなじみ4558をローノイズ高出力にしたオペアンプICだそうだが、調べてみると2043DDの方がローノイズ(選別品?)らしい。4558を入力段に使った1980年頃のパワーアンプを使っていたが音は良かったしS/N比が悪いとも感じなかった。標準品の2043Dで充分な性能という事で特性の良いICが良い音質になるわけではなく最適な回路で使う事が重要だ。

 抵抗やコンデンサーにも特に「凄そうだな」と思う部品はなく、トランスも安価な物だろうし電源回路も小容量の電源用IC、入門クラスのプリアンプだという事を実感できる。

 部品の少なさはメインシステムのSU-C7000でも感じたが、こちらの方がだいぶ古い事を考慮すると先進的な構成といえる。

 

 実はフロントパネルのセレクタープッシュスイッチに長い棒が付いていて、背面入出力端子の近くに配置したスイッチを操作する事で信号系の最短取り回しを狙いました!という機械的変態配置構造を期待してたんだが、、、残念!!!

NIKKO BETA30 特徴的なセレクター

 セレクターはテープの相互ダビングをプッシュスイッチでやったらこうなったという事だろう。3ヘッドデッキの録再モニターも出来るみたいだ。

 音質は充分に良いと思う。

 併用しているそれなりに高級で音の良いプリメインアンプのプリ部分との比較では劣る部分は無いと感じた。量感や迫力というタイプではなく素直でくっきりした音で、組み合わせるパワーアンプはさほどマッチングを気にする必要はなさそうだ。

 すべてのプリアンプを比較しているわけではないが、この時期のプリアンプとしては各社の最上位機種には比肩しないものの、その下位モデルよりもはるかに安価なのに音質で上回る部分を持つ秀逸な機種と思う。

 

 音の鮮度が高い。特定の帯域を誇張する事はなく解像度も良い。厚みのある音ではないが小音量時に音が痩せる事はなく、感触の良いボリュームは音も良い物だった、という事だ。フォノイコライザーもすっきりと鮮度が高く素直な音だ。
 サブソニックをONにするとヴォーカルがよりすっきりとクリアーになる。今のプレーヤーとの組み合わせでは常時ONで良さそう。

 トーンコントロールは大げさに音が変化するタイプではなく、バイパスできないが目立つ音質劣化も感じないので使いやすい。

 

 操作感は全体に良好だが電源ボタンを押しこむときには本体が動きやすい。ラックマウントできるタイプなので固定してしまえば問題なしだが、私の使い方だともう少し重量があってくれれば「そっと」押す必要が無くなるのだが。

 

 ICを使ってシンプルな構成で基本特性を確保し、ボリュームは贅沢な物を採用する。プリアンプのコストの割り振りとして正しいと思う。回路はIC化で充分な特性の物が得られるので、もう売り文句にはならない時代になっていく。時代も価格帯も違うがSU-C7000もボリュームとバッテリー電源、そして立派な外観へのコストの割り振りが大きい、で、音が良いから昨今中古人気が凄まじい。回路云々を考えるなら中身は見ない方が良い(笑)

 

 このBeta30の中身を丸パクリして、プッシュボタンスイッチはやめてテープは1系統にし、高級(で、チョイ重ため)なケースに入れて、ヨーロッパの見慣れないブランドを張り付けて、新製品として50万円で売るw

 今時のオシャレ高級オーディオとして通用すると思うな、嫌われない素直な音だし。

 

 独特のデザインの見た目通りに操作性には癖はあるが、音質は流通価格以上のクオリティで良い買い物だった。

 見慣れないメーカー、迷う操作性、アナログ時代の機能、充分な音質、安価な流通価格、サブシステムにはちょうど良い。ナカミチは高級なんでサブソニックが無いからねぇ。

 

 以下、ダラダラ書きます。

 

 NIKKO

 「にっこーけっこーだいわかんこー」と「いとーにゆくならハ、ト、ヤ」は昭和の定番だが、NIKKOは日光ではなかった。

 日幸電子製作所という会社のオーディオ部門。現在も存続している会社でブレーカーなどを製造している。

 

 オーディオに興味を持ち始めた頃に、秋葉原の小さな店がゴチャゴチャと乱立する一角に機材を並べている店舗があった(ような)記憶がある。

 私の中では「三栄無線」や「サンオーディオ」と並ぶ「ガレージメーカー」

 1960年代から1970年代、レシーバーの時代には雑誌に広告を載せるようなブランドだったようだが自分の世代ではないので記憶は無い。検索して出てくる過去記事ではレシーバーの評価は高かったようだ。

 オーディオに興味を持ち始め雑誌を読みふけっていた1970年代半ばにC-201という大手メーカー顔負けの高級プリアンプを販売し、パワーアンプはメーターもない質実剛健な外観だがA級増幅でエクスクルーシブの半額以下、それなりに売れていたんではないかと思う。

 高価なプリアンプとA級パワーアンプで存在を知ったが、その後はまた記憶がない。オーディオブームとなってからは大手メーカーの新製品ラッシュに飲み込まれて、雑誌に取り上げられることも無くなったのだろう。

 その頃かな、オーディオ誌の「マニアさん紹介」的記事でNIKKOのアンプを愛用している人の記事を見た記憶はあるが、それもはるか昔。

 インターネットでは検索してもほとんど出てこないのだが、この時代のこういう物を愛用している世代や趣味はブログやSNSなどに馴染まないんじゃないか?マイナーブランドすぎて反響も共感も得られない。

 私がこうやって文章にしているのは「書くオーディオ」も楽しいからで、正直NIKKOのネタはOTTOのスピーカー並にウケないと思っている。

 

 今回いろいろと調べると1970年代にはレシーバーやプリメインアンプ、そして上記の高級路線のセパレートアンプへとラインナップは時代に合わせて変遷していくのだが、1980年代に入ってからは国内向けの製品は無いようだ。

 海外へは1980年代終盤までセパレート/プリメインアンプ、チューナー、レシーバーの他、レコードプレーヤー、テープデッキ、CDプレーヤー、グラフィックイコライザーとスピーカー以外一通りのラインナップを見つけることができた。価格帯は中級機までで、海外のサイトの情報では1989年までとなっている。日幸電子の社史に拠れば1987年に音響機器の生産を中止、となっている。

 バブルで忙しくて本業に専念したのか?儲からないからやめただけなのか?

 このタイミングでスパッと手を引いたというのは結果として「経営判断が優秀」だと思う。なにしろオーディオではない分野で今も会社があるのだから。

 

 なぜ、輸出モデルともいうべきBeta30が国内中古市場に時折出てくるのか?

 推測だが、A級パワーアンプは1970年代からのモデルに根強い人気が有り売り続けていたがプリアンプC-201/203は高級路線(複雑な構成)だったので製造を続けることが難しく、海外向けのBeta30を少数日本仕様にして組み合わせて販売したのではないかと推測する。今回Beta30と一緒にパワーアンプM-204の中古品も売っていたので、同じ人が使っていたのだろう。パワーアンプはA級増幅の物が多く、日本ではマイナーだが海外では評価が高い。

 NIKKOに限らず、既にないブランドでも今も生き残っている製品はあり、有名ではなくとも良い物はある。発展途上中のオーディオ機器は面白い、機会があれば色々と聴いてみたい。