ソニーのTA-F333ESR、1988年製の79800円。
激戦区798に重量級の先鞭をつけた333ESX(18.6Kg)の直系、21.2Kgと歴代最重量モデルとなる。翌年の333ESGも同じ重量だがリモコン付きなのでESRが最強(なのか?)
昔TA-F333ESXを店頭で聴いたが当時もっと気に入っているアンプを使っていたので特別に良い音という感じは無かった。同傾向の音で同じ値段なら当時のサンスイ607よりもこっちの方が好みかな、という記憶。オーディオ仲間は555でも333でも大差ないので安い方がお買い得といっていた。
あまりソニーのアンプは使ってきていないけどTA-N330ESというパワーアンプは一時期使った。オーディオアンプに追加してリアやセンターウーファーに使用する用途を狙ったものだと思う。333系のパワーアンプ部分らしいがトロイダルトランスを使っていて1989年発売なので、今回のESRよりも少し後のモデルがベースだったのかもしれない。セパレートアンプとしてはローエンド、この時期いくつかのメーカーから「追加アンプ」があった。
過去の音の印象ではこのシリーズをどうしても使ってみたいと思ったわけではなく機会があれば、という程度。中古市場では人気が有り価格も高いのでどうせ買えないだろう、と思いつつ333ESRの出っぱなしの物を安価に勝負したら購入出来てしまった。
333シリーズ中最大重量だが特徴的な「Gシャーシ」が重いのであって中身が純粋に重いわけではない。筐体の重量を音に生かそうという手法は以前入手失敗した京セラのA-710や同時期のオンキョー817EXと同じコンセプト。
少し脱線。車両の基本骨格を「シャシー」と呼ぶ事を先に覚えていたので、「シャーシ」はなんとなくシミュレーションとシュミレーションみたいな発音を間違えちゃった創造カタカナ英語じゃないか?と当初違和感が有ったけど、どっちでもいいという事になってるらしい。ネット記事では「シャーシ」が多く、前後の文脈で意味は解るし今では普段の会話でもぐちゃぐちゃに使ってる。英語表記の時に間違えるからちゃんと覚えようとしていたけど、スペルチェックが簡単になったので最近はどんどん気にしなくなってる。楽で良い(笑)
薄汚れた状態だったが、届いてみると目立つ傷はなく、サイドウッドも小さな角当りがある程度。
初期動作確認では軽いガリがあるだけの動作品。が、しばらく音出ししていたら奥側の温度が高い。熱々ではないので調整だけで直りそう。
中をみると埃はそれなり。
掃除しながら調整か所の確認と各部目視点検、コンデンサーの頭のふくらみや液漏れは見当たらず、ハンダの状態も良い、部品の足が真っ黒という事もないし、半固定抵抗も小さな今風の物なので交換の必要はないだろう。
プリ基板に玉虫色のコンデンサーがいくつも付いているので修理品?と思ったが調べてみると元々こういう仕様だった。
この価格でそれなりの音に聴こえるように色付けしたという事だな。
バイアス(アイドリング電流)調整もDCオフセット調整も手動、この時期のアンプとしては古臭い、、、ではなくオーソドックスな造りだ。
調整作業自体はやりやすい。入手後にサービスマニュアルを見つけてダウンロードしておいたけれど、半固定抵抗の脇にバイアス設定値がプリントしてあるので、マニュアルは不要だった。。。
半固定抵抗の接触不良もなかったのですんなりと調整終了。
両チャンネル共にバイアスが高い方向にずれていたが、同程度ではなく片方が規定値の倍ほどになっていた。ばらつきのある経年変化はソニータイマー?ではなく、調整用半固定抵抗の可変範囲が大きくほんの少し動かしただけで変化が大きいからじゃないかと思う。
適当な抵抗を併用してもっと調整しやすいように、、、、コストかかるからやらないんだろうな、一度調整すれば当分ずれることも無いだろうし。
しばらく放置、数時間音出しして変化が無い事を確認してカバーを付けて完成。
操作系は必要充分の機能で操作に戸惑う事もないけど、押しボタンスイッチが小さすぎて目視で判りにくいのは弱点かな。このクラスなら複雑な事の出来る操作性よりも、基本性能にしっかりお金をかけてくれた方が良いので全体的には好感度大。
音質は独断。
シリーズ中でも人気の有る音らしい、バランスの良い音でどちらかといえば湿り気を感じるやや暗めの聴きやすい音。
繊細な表現はイマイチだけど一聴して心地よい。量感もあるので店頭試聴では競争力が高そうだ、当時サンスイ607と比べて悩んだ人は多いんじゃないかと思う。
低音は切れは良くないが量感はある、高音は伸びている感じが少ない反面キツイ音もでない。一番聴こえる中音域にもしっかり厚みがあるのでややカマボコにも聴こえる帯域バランス。
中古市場で人気が有るのも解る、あまり良い言い方ではないがソニーは安価でも魅力的に上手くまとめる。この1年前にパイオニアA-717ではそれまでとは違う押しが強くキレキレの低音(映像との相性がとてもいい)に変えていてソニーとは対照的。
レコードからCDに主流が移り各社試行錯誤していた時期なんだろう。
レコードを聴いてみると、MMカートリッジでは少し高音域に癖が出るが、これはカートリッジとの相性かな?少し使い込んでみよう。
スイッチ切り替えでハイゲインしてMC対応。ローインピーダンスの物ではカートリッジの実力発揮とまではいかないが、同時期同クラスのアンプでは標準的。
基本的に柔らかな濃さを売りにした音と感じるので「Gシャーシ」の売り文句「透明感と解像度」は特に抜きんでている感じはない。高音の出方がきつめのスピーカーでも甘い音になるのはメリットなのかデメリットなのか?
組み合わせる機材で印象が変わるのかもしれないが、アンプは色付けがなくオールマイティを良しとしているのでドンピシャの好みではない。
昔聴いた333ESXは骨太で元気な音という記憶だったが、だいぶ耳あたりが良くやわらかに感じるのはプリ基板のコンデンサーのなせる業?悪く言うなら滲ませた音なのだが、響きを上手く演出している。
しばらく楽しめそう。