音遊び~オーディオのブログ

 ガレージで楽しむ古めのオーディオ

アンプ修理の楽しさと難しさ。テクニクス SU-V9の修理。

 アンプを設置して、音が出た瞬間は楽しい。

 

 真空管パワーアンプを使っていた頃は、球を交換したり、カップリングコンデンサーを変えたりして音がかわるのを楽しんでいた。これが曲者で、交換した当初は「良い音」なのだが、「もっと良い音」になるんじゃないかと思って高いコンデンサーや真空管を買ってみたりする。要するに満足しないということで、終わりがない。プラシーボ効果は長くは続かないものだ。

 楽しめているうちは良いのだけれど、10台くらいになり、あっちを直し、こっちの部品を変えてとやりたいことばかりが増えてしまい、何をやってるのか解らなくなって気に入っているモデルを残して動作品もジャンクも一気に手放してしまった。

 残した球パワーアンプは動作品4台(同機種を2台ずつ)と集めた球を少々。だったが使用中に1台壊れ、自分で直せば直せる状態なので保管。

 別の1台をいつでも聴けるようにしてあり、時々動かし、気が向いたらバイアス調整などしている。

 時々聴く程度なので順繰りに壊れていっても動作品3台あれば一生ものかもしれない。ビニールにくるんで保管してあるものは老後の楽しみか、生活費になるのか(笑)

  

 パワーアンプは最初が半導体アンプのキットだった、それを弄り回して改造したりしたので、何となくわかったような気になっていて「直せる」と思い、ジャンク品の古いパワーアンプを買ってきて、何とか修理できてしまったりもした。

 

 しかし、今は半導体のアンプ修理は手を出さないことにしている。

 

 部品点数は真空管アンプよりも多く、半導体も古いと入手困難な物も多いため、楽しみよりも苦しみの方が勝ってしまう。

 今は修理してでも使いたいときは誰かにお願いするのだが、メーカーの修理部門は1980年ごろのアンプなど相手にしてくれない。一時期のエクスクルーシブはパイオニアが別の修理部門を立ち上げて頑張っていたが、採算が合わないのだろうか、いつの間にかなくなった。

 DENONは修理対応が良いとか、以前のLUXはよくわかってる人がいたりとか、地元のパイオニアのサービス部門も良かったけど、最近はどこも評判は良くない、まあ、悪い評判の方が広まりやすいというのもあるだろう。

 

 インターネットで検索すると、自分で修理する人もいるし修理業者も多数みつかるのでその気になれば修理は依頼できるのだが、選択肢があるのは良いがどこを選ぶかが難しい。

 

 ヤフオクでアンプ修理を売りにしている人を見ていると、hfeは上回っていれば良いとか、やたらと派手なカナブン色の電解コンデンサーに交換したりとか、結構乱暴なやり方に感じる。

 信号系のコンデンサーを変えれば音が変わってしまうし、P-Pで使うなら真空管ではペア組するのが当然なのに、どうして石のアンプだとパワートランジスターが「上位互換」のような解釈になるのだろう。

 交換の必要があるほど劣化しているならコンデンサーは変えれば良いと思うが、通電時間の短い上物であれば古いからといってむやみに交換しなくても、1990年以前の日本製の部品のついているものならば大丈夫だと思っている。入手しやすい容量のコンデンサーはガンガン変えるのに、入手できない電源のブロックコンデンサーは「まだ大丈夫」というのはどうなんだ?

 スピーカーのネットワークでも電解コンデンサーを嫌ってフィルムコンデンサーに変えるショップがあるが、これも音が変わってしまう。

 

 特性が良いことが音の良さに直結していないのはすでに周知の事実だと思うのだが。

 

 以前、修理品のアンプを購入したときの売り主が、きちんとした仕事をしていたので、別のアンプが壊れた時に修理依頼したことがある。

 良い仕事ぶりで、きちんと直って戻ってきた。パワートランジスタはすでに廃盤だが、経験豊富なその方は別のメーカーのアンプから同品番の物を外して直してくれコンデンサーはむやみに交換しないで、オシロスコープで信号を確認し、正常動作する状態で戻ってきた。無駄な部品交換をしないので価格は安く感じたし、きちんと不具合個所を指摘して説明もしてくれた。

 感謝している。その後手放すまで安定動作していた。

 

 だが、音が違う。

 修理依頼している間に同型機の状態の良い物を見つけ、当時マルチアンプをやってたこともあり頑張って購入してしまったのだが、比べると明らかに違うのだ。修理品が壊れる前の音は後から買った物と同じ印象だ。

 そもそもが同じアンプなので、聴いて全く違う音がするわけではない。2台を比べないとこういうものだと思う程度だけれど、よく聴く音楽で比べるとわかってしまう。

 こういうのを具体的に説明するのは難しい、音質は同じだけれど低音の立ち上がりが違う。なんというか、キレが甘い。中高音はあまり差を感じなかった、トランジスタのばらつきで動作点がそろっていないのか、電源の容量が落ちて(そういう事はないのでイメージ)一気に出力を上げられないのか、そういう感じで、「直ったけれど絶好調ではない」と思った。これはオシロスコープには出てこないだろう、スペアナでもたぶん見えないな、メーカーなら計測方法があるのかもしれない。

 この時はマルチアンプをやっていたので低音のレスポンスが良い方を低域に使った。

 

 高級機の場合はメーカー生産時には部品メーカーにトランジスタのペア組をして納品させる、選別品の抵抗やコンデンサーを使う、高信頼性の部品を使うなどは当然だったろう。

 当時のメーカー在庫部品を入手できなくなってしまったら、もう同じ物として直すのは個人レベルでは無理だ。

 

 この経験以降、修理でオリジナルを上回ることはないと思っている。

 

 気に入ったアンプは持っていて大事に使っている(スペアが欲しいが買えないな)ので、最近買うものはサブシステム用の気軽なアンプとか、何となく聴いてみたくなったものとかだ。

 

 アンプを修理する事そのものは趣味ではない、なので中古アンプはできるだけ使用時間の短そうな物を狙うことにしている。修理品ではなく、ワンオーナーで使わなくなって埃まみれの物が押し入れから出てきたとか、そういうものだ。生きていてまだ寿命が残っている物と、一度寿命が尽きたが直せば使える物とは大きく違う。

 

 これまでのところ良い物を入手できる確率は7割(金額ベースで)程度かな、メーカーによっては外れ率が高い物もあるし、市場の人気が高いと状態が良いとはいえ割高な物もある。

 

 一応の目安としてできる限り部品交換していないこと、外観が綺麗な物は大切に扱われたろう、でも大切に使い込んでる可能性もあるかな、中をみて基板や部品を確認できればかなりの確率で当りを引ける。

 天板を開けて中が見られれば必ず確認し、コンデンサー交換歴がある様なら使用時間がそれなりに長い物と推測、いたずらに派手なコンデンサーに変えられているものは避ける、パワトラ交換歴があれば買わない、品番の違うパワトラが付いているなら問題外。

 

 こんなマイルールがあるのにどうしても欲しい!と音が出てれば買っちゃう、そういう物はたいていハマる。

 どうしても欲しい!ってモデルは高級モデルだ、流通量が少ないし、使い切って故障した物を何とか直したような物でも外観では解りにくい。滅多に出てこないので、見つけただけで欲しくなってしまう。

 

 高級機は外すと損害額が大きいので金額ベースでは7割だが数では9割は良品なので楽しめている。

 でも、こうして書くとせめて金額で8割以上の勝率にしたいな、趣味とはいえ無駄使いは避けたい。

 

 やっと本題。

 

 先日のトリオに続いて、またしても良さそうなプリメインアンプに出会ってしまった。

 ジャンク品として売られていたテクニクスSU-V9、格安ではないが外観に使い込まれた感じがなく音は出るとある。一見しての印象は状態が良い。

 棚から降ろして子細に観察。店員さん曰くジャンクの理由は古いモデルという事とスピーカー端子が破損している事。「中が見られればなぁ」と言ったら店員さんが天板を開けて見せてくれた。

 店員さん、優しい。

 

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SU-V9 奥には先日のトリオが。。。

 

 触られた様子がなく埃も極わずか、掃除した感じもないので綺麗な部屋のラックの中で眠っていたのではないかと推測。スピーカーターミナルはひねるだけのタイプなのにグイっと回して破損させたかな?

 

 購入決定、お持ち帰り。

 

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修理前にパチリ。購入前に中を見せてくれた親切な店員さんありがとう。

 スピーカーターミナルが壊れているので動作確認が面倒なため数日放置。

 オーディオ仲間が嬉しそうにジャンクアンプを買ったと連絡してきたので、いいなぁ、楽しそうだなと思って、ようやく天板を開ける。

 

 

 感想も音質評価も独断です。

 綺麗だ、けどSU-V10に比べると造りはだいぶ安っぽい、とか言っちゃいけない。

  お気に入りのSU-V10の弟分だが、2年後にシリーズ最高級機としてデビューしている。この頃は2年経てば旧モデルなので新型のこちらを売りたかったのだろう。しかし、物量も構造もV10の半分位かな。

  当時の販売価格は125000円、物価上昇を考えるとV10の半額か。ヤマハなどにも通じる縦長ツマミ、1980年代に入ってからのスマートで都会的な新しい時代のデザインです。あちこちランプが光ります。

 

 軽く音出ししたら中々に良い音、MM,MC共にゲイン切り替えができるのでカートリッジ遊びにはもってこい。 出てくる音はV10には劣るが(そりゃそうだ)バランスが良く、充分にパワフルだけど押し出しは強くなく、育ちの良い高音質。普及価格帯のアンプにはない高級機の音。

 店頭で聴いたらサンスイやオンキョーの10万円クラスに比べて大人しく、割高に感じるだろう。

 

 でも、これは秋葉原の店頭で値切って買うものではない!ナショナルのお店で買うものです!

 オーディオ好きじゃないけど、どうせならこの機会に良い物を買おう、と思った人が、新築した家のリビングルームの娘が習っているピアノの反対側に、新しい家での生活に相応しいステレオセットを導入、最初は娘に時々クラシックを聴かせたけれど、ピアノをやめてしまってからはほとんど使わなくなった。。。だれの家の話だ(笑)

 

 MMの1mmV入力は自社の205C-ⅡLを最高の状態で聴くためかな。後で試してみよう。 MCのヘッドアンプの音はV10よりも良いかも。V10では組み合わせるカートリッジによっては音がぼやけるので昇圧トランスを使っていたけれど、V9の方がカートリッジを選ばない。

 ランプも全部点くしボリュームやスイッチのガリもほとんどない、使用時間は少ないと判断。中の部品の状態からするとこの先の寿命も長そうだ。

 

 当り!嬉しい!俄然、使いたくなる(笑)

  本格的に使う前にまずは修理しないと。

 

 

 

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スピーカーターミナル、破損

 スピーカーターミナルは8個のうち5個は取れてしまい、2個がぐらつく。分解したら案の定まともなのは1か所だけだった。

 下位モデルを部品取りに購入して、、、と考えたが、このタイプのターミナルは太いケーブルは繋げない、1.25SQまでかな。新品部品が入手できるわけではないので、いずれまた壊してしまうだろう。

 私はスピーカーを(アンプも、だな)とっかえひっかえするためにケーブルはバナナ端子での接続にしているので、この部分はごっそり交換。

 

 

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スピーカーターミナル交換後

 ターミナルは基板実装の樹脂製で8個一体のもの、丸ごと外し再度基板実装できるように考慮しつつ加工してバナナジャックに変えて再実装。

 地味に赤黒の樹脂製が良かったんだけれど、ちょうど良さそうなサイズがこの色しか見つからずここだけ時代が新しいが、設置すれば見えないのでよし!

 

 動作品見つけてきて端子交換しただけ、こういうのはアンプ修理といってはいけません、電子回路修理を期待した方がみてたらごめんなさい。

 それでもなんだか楽しい。楽しい時間が短かった、もっと直したい!と思ってはいけない、人は過去から学ばなくては。

 

 しかし、良さそうなの見つけるたびに増やしてどうする!もうアンプ禁止!