音遊び~オーディオのブログ

 ガレージで楽しむ古めのオーディオ

エッジ交換の楽しさと難しさ スピーカー修理 その1

 エッジ交換はもう長い事やっている。

 

 私よりも少し年上の世代の人には、当たり前のようにエッジを自分で交換する人が多くいた。

 交換して間もないユニットの音を聴かせてくれて

「まだエージングが進んでないけど、もう少しするともっと良くなるからまた聴きに来なよ」

 などど優しい言葉をいただいた。

 

 そんな40年も前、自分で買ったスピーカーのエッジを交換するまで使う事はないと思っていた、きっと数年ごとに買い替えてしまうだろう、と。

 

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 オンキョー FRX20 20センチフルレンジのエッジ張替え後

 

 と、思っていたが、今では高校生の時にアルバイト代で買った40年前のフルレンジユニットを自分で張り替えて使っている。エッジはメーカー純正の少し凝ったものではなく普通のウレタンなので厳密にはオリジナルではないという事になるが音は出る。

 

 「思い出バイアス」が深~~~くかかっているユニットなので、今でも舶来品のフルレンジなんぞ足元にも及ばない、物凄く良い音だ!

 

 まあ、実はエッジを張り替えてまで使おうというスピーカーはさほど多くないと思っている。それなりにお金も時間もかかるので最新型に買い替える方が普通の選択だろう。私に依頼していただく方も「思い出バイアス」がかかっていて、これが使いたい、という人が多い。

 

 色々と張り替えてきた、1960年代のものから1990年代まで、元のエッジはウレタンやラバー、サイズは10センチから38センチまで。 メーカーによって作業の難易度は違うが張替えの基本作業は変わらない。

 ユニットを外すのはほとんどの場合、フロントバッフルにネジ留めなので、難しくはない。と思っていたが、シール材で張り付いていたり、裏側から留める凝った構造のエンクロージャーでリアバッフル外しで苦労するものもある。

 

 知人のところに有った古い国産25センチの2ウェイはウーファーエッジを切り貼りしたセーム革で張ってあった。ユニットは外さずに張り付けただけとの事。

 「ボリュームを上げるとバリバリいうけれど、そんなにでかい音出さないからこれで充分、結構いい音だよ」との事。確かに古い高能率ユニットならではの軽やかな音だった。

 ネットで検索すると、皆さん色々とやっている。セーム、スポンジ、布、ラバー、シリコーンシールと布を使って作るなどの市販部品は買わない派の人も多い。市販品もウレタン、ゴム、布、と色々とある。

 

 私の場合は今はほとんどの物にウレタンエッジしか使わない。元がラバーの物でも多くの場合ラバーコートでダンピングしてウレタンエッジを使っている。

 

 理由はいくつかある。

 以前は市販のラバーエッジも使ったのだが従来同様のゴム質の汎用品は厚みがあるとコーン紙のテーパーが深い物には馴染みが悪く作業性が悪い。

 張り替えた物をヤフオクやジャンク屋さんでみつけて観察すると、ヤフオクの写真でも解るくらいコーン紙側の接着に近いところにウニャウニャと小さな歪みがあったりする。エッジからの輻射も音質には影響する(解るかどうかは別として)のでこれはできれば避けたい。

 

 最近では柔らかく薄い軽量ラバーエッジというのも見かける、シリコーンゴム製らしい。これは使うユニットに拠ると思う。

 フルレンジで最大入力が小さくストロークがあまりない、古い20センチくらいまでならば前述のセームのように動きが良くていいかもしれないなと思う。これはどうしてもゴムが良いなら、だが。

 問題はウーファー、それも1985年ころ以降の小型ウーファーストロークを大きくして下の再生限界を伸ばしているタイプは要注意。ダンピングが足りず変形もしやすいので音量を上げると低音がぼやける。

 シリコーンで作るなら型抜きだろうし、硬度もある程度は調整できるはずだから、特殊な形状や特定のモデル用のコンプライアンスで作れば良いなとは思うけれどそこまでこだわっても需要がないだろうから、試作を繰り返してまでこういうものを作るのはアフターマーケットでは無理だ。

 

 ネットで見ていると、ゴム以外ダメ、布にビスコロイドが一番長持ちで音もいい、など、色々だ。

 

 そういう括りでは私はウレタン最高!な人。

 

 ウレタンエッジは「発砲ウレタン」なので、簡単に言うとスポンジ状で表面はザラザラ、なので輻射が出にくい。

 価格も安く張替え時の作業性も良い、貼り付け後に収縮で皺が出ることもない(私は未経験)、大音量時にも変形は滑らか。ストロークが大きいとか大口径でコーン紙の重量がある場合でダンピングが足りなければラバーコーティングでコンプライアンスを下げられる。

 

 そもそも今でもウレタンエッジが使われるのはなぜだ?必要だからだ。

 

 と、ひとしきりウレタンエッジを褒めたので弱点というか、注意点もメモしておこう。

 

 寿命が短い事。まあ、これは仕方ない。動きがしなやかで輻射が少ない事で相殺していると思っている。ラバーが硬化していくのに対して柔らかくなっていきボロボロに風化していく。

 切れるまで使うと考えればラバーの方が長寿命だろうが劣化を考えると20年もたてば双方ダメになる。硬化して音が変化してしまうのはラバーの方が早いようにも思う。

 材質の変化か、ウレタンも1970年代より今の物の方が寿命は長くなっていると思う。ラバーコートや保護剤塗布でも寿命は延びる、はずだが、塗ったものがまだ10年経過程度なので、「延びるはず」だな。

 

 重要なことだが、エッジ交換すると音は変わることが前提だ。ラバーでもそうだけどオリジナルと同じ音にはならない。

 私には解らない場合も多く、これを気にしていたら修理自体できないが、オリジナルよりも変化、劣化する理由ならあるが、音質が向上する理由はない。

 

 駄目だったものから音が出るのだからエッジが切れた状態よりもまともなのは当然だけれど、「オリジナルよりも良くなった」という人は2種類だろう。

 1つ目は「変化」が自分の好みに合っていたのでそう感じる、前述の自作セームエッジなどだ。個人の人に多く、「好き」な音ならばそれもありだし、そういう方向に修理した、それを狙ったという人も多い。

 2つ目は「良いところだけアピール」、例えば柔らかすぎて低音が暴れることには触れず「軽やかな中音」とか、コンプライアンスが低すぎて低音の立ち上がりが本来よりも鈍くなったのに「重厚感のある低音」という具合。他と違う事が重要と考えるオーディオショップやステレオタイプなマニアの人に多いかな。「チューニング」として儲かるとか、だれかが納得してくれれば自分の修理を正当化できるとか、そういうパターン。良くない事だと思うけれど。声が大きいと正当化できると思っている人は一定数いる。

 

 スピーカーは結構な数を修理しているので書くことがたくさんある。備忘録を兼ねているので次の修理の前に読みかえすと、失敗もしにくい。

 

 長くなってきたので、その2に続く。