L-01A、一度は使ってみたかったので今回購入。動作確認から初期修理調整まで一気に書くので長いです。
まずは例によって蘊蓄。
発売時、トリオがなんだかすごいアンプ出したな、と思ったが既にセパレートアンプを使い始めていたので雑誌で「凄いなぁ、良いなぁ」と眺めただけ。
ケンウッドという高級ブランドの始まりであり、その後数年の間に社名変更してミニコンポやカーオーディオへとブランド展開し、落ち着いた高級機というよりも安っぽいイメージになっていったなぁ、と、思ったが、結果としては今でもブランドが残っているので「サントリパイ」の中で唯一の勝ち残りという事になる。
L-01Aは私の印象ではアナログレコードの時代の「トリオの最終進化型」、他社で「〇〇A」と呼ばれる疑似A級だが、それ自体は大きく前面に押し出していない。厳選した部品、音質にこだわった信号系の取り回し、そして何よりも他社との差別化として別電源まで採用しての「非磁性体化設計」(効果の程は?)、高級ブランドになるためにこだわって作り上げた真面目なアンプ。
当時、プリメインで買うなら先進的デザインのこのL-01Tか、オーソドックスな外観でブラックフェイスのテクニクスSU-V10だなと思った。思っただけだったけど。
仕様としてはトリオブランドのセパレートアンプ、プリアンプL-07CⅡとモノラルパワーアンプL-05M2台を合わせて再構築、筐体の素材や別電源ユニットとしてセパレートアンプとは異なるメリットを与えて、、、で、価格も両方合わせたくらいの27万円!この価格のプリメインアンプで、この外観、ブランドをアピールするにはインパクト充分だったろう。
07CⅡと05Mはそれぞれに使ったことがありそれぞれ気に入っているけれど、この2機種を組み合わせて使うのなら仕様をみて検討するとL-01Aの方が良い、ような気がする。とはいえ、大量販売したモデルではないので流通数は少なく中古で良い物にはなかなか巡り合わなかったのだが、、、、
やっと本題。
今回、電源入る以外動作未確認だったのでさほど高価ではなかったが、普通なら手を出さない。けど、勝負!
結果としては購入して正解、当たりの個体だった。
手元に来たのはいかにも「使わなくなって保管されていたものが出てきました」という感じで修理履歴のステッカーもなく綺麗に掃除もしてない、ネジの頭を観察してもいじった様子はない。
このアンプに限ったことではないが、修理ブログなどを見ているとやみくもにリレーやコンデンサーを交換、パワトラを別の物に変えたりと、音が出てりゃいいって物も多く、高級機になるほど無理やり直したような物が多いのは利益率が良いからだろう。
一度寿命が終わった物が欲しいのではない、まだ寿命が残っていて本来の音のする物が欲しかったんだよね。
入手後、まずは点検。
電源ON、プロテクターが外れることを確認。
あちこち切り替えてみる、インジケーターランプが1個(AUX)点かない。
バランス使用時に右チャンネルの音出ず。バランスボリュームをグリグリやったら問題なくなった。バランススルー時は問題なし。
ボリューム右チャンネルにわずかにガリがあったが、グリグリやったらOK。
リレーやセレクターの接触不良は無し。セレクターはロータリースイッチではなく入力リレーを切り替える機械的な方式、音質に疑問のある1990年代のミニコンポの半導体スイッチで電子的に切り替える方式ではない。リレーは金接点、お金かかってます、さすが高級機。
音、良いなぁ、テスト用の小型スピーカーでも中高音の良さは充分に解る、PHONO-MC動作テストにJAZZヴォーカルのレコードとオルトフォンMC20使ったら、しばらく聴いてしまった。
音出し確認できたので外観を掃除してからカバーを開けて清掃。
テクニクスSU-V10以来の埃だらけ。予想通りで、期待ができる。1979年製だからね。一度も開けてなければこんなもんですよ。
丁寧に掃除しながら目視点検。コンデンサーの液漏れらしきものを2か所発見、久しぶりに電子部品交換をすることになりそう、はんだの目玉も発見、コンデンサー交換ついでに直しておくことにする。
ボリュームはシャフトでノブとつないであるがジョイント部分にクラックもなし。
当然パワトラの交換歴もなし。
掃除後、電源再投入、まずはインジケーター球切れを確認し、電圧確認測定中に左チャンネルのヒートシンクが右チャンネルよりもだいぶ熱い事に気づいて即電源OFF。
仕方なくコンデンサーが届く前にはんだごて登場。
はんだの目玉を治してパワーアンプ初段基盤の2枚のコネクター差し込みをぐりぐり。手をかざすと左チャンネルの異常発熱は完治、むしろ右チャンネルの方が少し暖かい程度に差はある。
改めてインジケーターの電圧を確認。12V。代替品が入手しやすそうで良かった。球は自動車のインパネ球が小加工で使えるのだが、手持ちの物では明るすぎる。純正品の抵抗値を測ってみると車用とはだいぶ違うので少しでも近い物を探して発注。
当面必要な部品が届くのを待つ間はなんとなく掃除してみたり。愛でるのもオーディオ。
コンデンサーが届いたので交換。外してみると液漏れが疑わしいのは1個だけ。丈夫なんだよ、古き良き日本の部品は。
せっかく外したのでこの2個は交換。定電圧回路とプロテクター回路なので音質変化はないだろう。
バイアス電圧とオフセット調整。元々音が出ていたので大きな問題はなかったが右チャンネルのバイアスは少々高かった。調整できない!ようなことはなくきっちり調整。
経年変化で調整が必要となるのは真空管アンプの時代から同じなのだけど、いつの間にか壊れるまで使ってポイッ!になってるのが悲しいなぁ、高級機は捨てないでお金をかけてでも調整して長年使っても見劣りしない性能を持っているからこその高級機なんだけどなぁ。
元々音は出ていたから、このままの状態で中身埃だらけで「動作品」として使い始めたら時間の問題で本当のジャンクになっただろう。
当分楽しめそうな状態になったと思う。
インジケーター球、到着。
試してみるとまだ少し明るい。経年変化とかではないだろう、抵抗値を測ると明らかに違う。こうなると「必殺の裏技」を繰り出そうかと思ったけど、今回は以下の対応で違和感なく修理完了。
AUXから切り替えた時に隣と明るさが変わるのが嫌。「AUX」にはパワーONで使用中に必ず点く「SPEAKERS」の球を移設。明るさは「AUX」と並んでいるランプと同じなので切り替えたときに明るさが変わった、という違和感はなし。
新品互換球を「SPEAKERS」に付けておけば長持ちするでしょう。対象とする基盤の厚みがL-01Tの方が厚く、そのままでは挟み込むようにグイッと回せない。爪?の部分をカッターで少し加工したら純正品同様の「嵌め合い感」で無事取り付け。
写真で確認すると「STRAIGHT DC」の方が明るく見えるが、新品球は「SPEAKERS」の方です。色が赤と黄色なので明るさの違いは解り難く違和感は感じない。むしろ、黄色の方が明るく見える。
電球が少し明るい、という事は、少し発熱が多い、という事だけど、熱で樹脂を溶かすほどではないでしょう。
球の寿命にはばらつきがあるだろうけど、AUXが最初に切れるって事はCDプレーヤーをAUXに繋いでたんだろう。アナログレコードはめんどくさいし、チューナーは流行じゃなくなって、、、CDばかり聴いてたらインジケーター球切れちゃったよ、って事じゃないかな。こうやって時代背景を元に推論して往時を偲ぶのもオーディオ、ではないか(笑)
非磁性体にこだわったアンプ、だけれどネジは磁石に付く。
底板が薄い合板でやや貧弱に思えるので、天板ともども同じ厚みのアルミ、、、いや、贅沢に真鍮板で作り直し、ネジもステンレスと真鍮に変えて、、、
やめた方が良い、やめるべきだ。充分に音良いんだから。
使いやすいアンプではない、慣れると便利なところもあるがKA-9300同様スイッチの使い方に一癖ある。音質重視とはいえ、MM/MCの切り替えは入力端子差し替えっていうのは面倒。
真面目な時代のアンプです。長く楽しませていただきたい。