ダラダラと書いているといつになっても完結しないので、ここで一度まとめておく。
SX-P2がきっかけでP1P2P3と30センチポーラスコーンウーファのモデルをコンプリート(たぶん)して聴きこんでみた。
ユニットの違いを見てみる。
このシリーズの売り、30センチポーラスコーンウーファーから。
エッジは布の逆ロール、長期放置されたらしいものはビスコロイドが硬化して動きが悪いが、メンテナンスで何とかなる、過去記事を参照していただきたい。
コーンは艶消しグレーだが、裏側はアルミのキラキラ。金属の経年変化は出るようで、色々な方向から眺めると僅かに歪んで見える部分があるが、音質には影響は極小だろう。剛性の高さが裏目に出た部分かな。
金属の場合は密度のバラツキがどうしてもあるので長い時間をかけて変形する、純度が高い物の方がこれは出ると思う。鋳物は比較的歪んでない、密度がばらついているだろうけれど、粗い粒の集まりだからだろう。
鉄やアルミの歪は鉄の門扉やフェンスなどでもみられるし、車のボディやフレームでもある。蒸気機関車なんかは100年近く経つから、よく見ると解りやすいんじゃないかな、負荷がかからないだろう部品にもわずかな歪みがあったりする。
多くの場合、経年変化によるわずかな変形は問題にならないだけの事。スピーカーの振動版だと近くで良く観察できるし、平面で半艶だったりすれば解りにくいけど、一般的なコーン形状だと良く解るんだよね。これは紙で樹脂浸透タイプやカーボンのコーンでもよく見ると解る。けど、エッジがウレタンやゴムだと皴が撚るほどではないのでわかりにくい。逆ロールのビスコロイド布エッジには皴が出やすい、ギャザードエッジなら判りにくかったんだろうけど解像度が落ちそうだからこれはこれで正しい選択なんだろう。
40年も経ってからこんな風に観察されるとは思ってないだろうな(笑)
SX-P1/P2とSX-P3のウーファーは外観からも違う。
P1/P2ではセンターキャップに特徴があり、布製で柔らか、おそらくは低音を綺麗に再生するために中音域が出るのを嫌ったということだな。
P3では一回り小さく硬質に固めた布製(たぶん)、コーン紙の内側だけに注目するとでかいソフトドームスコーカーって事ですね。
この時期のウーファーでは大抵キャップ径はボイスコイル径くらいなので、軽量なボイスコイルで高い帯域まで再生するようにしたのだろう、2ウェイではウーファーに少し高い帯域まで受け持たせないとツイーターとの繋がりが厳しい。
SX-P3のクロスオーバー周波数は2.5KHz、ボーカルの帯域はウーファーから出ているので、「30センチフルレンジ+ツイーター」と考えた方がいい。
これは同様の構成の他機種と比べると、気に入ってしばらく使っていた同時期のオンキョーM6Ⅱの2KHz、聴きこんではいないがその15年ほど後に人気のあった2ウェイ機JBL4425の1.2KHzと比べると、かなり高い音まで出している。
センターキャップはフルレンジでも紙の物とアルミの物では高音域の音質の差がある。ツイーターが金属系なので同く金属系のセンターキャップが良いようにも思うけど、そうするとSX-P1のスコーカーのダイヤフラム並みなのでコストもかかるだろうな、2.5KHzならこの素材でいけるということだろう。
マグネット外径も実測110ミリといったところで、SX-P1/P2の156ミリの物よりも一回り小さい。
個人的にはP1/2にはオンキョーみたいに30センチクラスに180ミリマグネットとか使ってくれると、安いアンプでもボンボン鳴るので良いんじゃないかと思うけど、パイオニアも150ミリほどだし、でかけりゃいいって物ではない、という事で。
SX-P3用ウーファー
OTTO 4151200370 6Ω S30FX02
とマグネットにプリントされているが最初の数字は左右で同じ、シリアルではなく部品番号かな。
SX-P1とSX-P2のウーファーは外観では同じ。
センターキャップに皴がよっている物をよく見かけるけれど、音質には影響ない(と、私の耳では感じる)
が、外してみると品番は異なる。
SX-P2用ウーファー
OTTO 4151200211 8Ω S30FX01A
SX-P1用ウーファー
OTTO 4151200210 8Ω S30FX01
インピーダンスは8Ω、マグネットがSX-P3よりも大きいのでボイスコイルも大径で巻き線が長いという事か?
P1/P2用ウーファーの外観は一緒だし、見たところではマグネットも同じに見える。マイナーチェンジかもしれない、いくつかのSX-P1を調べないと何とも言えないが、新しめのSX-P1(こんなマイナー高級機が初期生産以外に存在するんだろうか?)を見るとSX-P2と同じ物が付いている可能性もあるか。
使い方はSX-P1とSX-P2共に一見バスレフだが、「密閉型の背圧を下げたもの」という印象だ。
特にSX-P1はユニット背面にぎっしり吸音材、上には前後をつなぐ分厚い板にスリットが開いているだけで、その上に小さなポートが二つ。
低音の再生限界が35Hzとこの時期の30センチクラスでは頑張っているのは大径スコーカーでクロスオーバー周波数が500Hzと完全に低音専用に使っている事、重く強力なエンクロージャー、密閉型のような使い方によると思う。
後のP2ではクロスオーバー周波数は800Hz、エンクロージャーももう少しバスレフっぽい使い方をしているが、低音の再生限界は40Hzとこの時期の一般的な物になる。
スコーカーはSX-P2では37ミリのドーム、SX-P1では67ミリのドームとなっている。
どちらもアルミ表面をアルミナ化したハードドーム。アルミナ化に拠って表面硬度を上げているのだと思う。
残念な事にSX-P1はスコーカーユニットがエンクロージャーに固着していて外すことが出来ず品番確認できず。故障して壊すつもりで外すまでオアズケ(笑)
SX-P2用
4151200471 6.5Ω DS-04
なぜかOTTOのプリントは無い。エッジは布の様で、特に硬化は無いようだ。
ツイーターはSX-P2とSX-P3は基本的に同じ、アルミ表面をアルミナ化したハードドーム。エッジは見たところビニールの様な樹脂製で、劣化の心配はなさそうだが、ストロークはないだろう、高音専用と割り切っている。
個人的にはあまりキンキンする高音は好きではないのだけれど、このツイーターはあまり刺激的な音はしなくて好みだ。エッジのせいもあるのかも?。
SX-P3用
OTTO 4151200380 8Ω DT-05
外から見ると同じだがSX-P2は、
OTTO 4151200461 8Ω DT-10
受け持つ帯域に合わせて変更点はあるのだろう。
SX-P1のツィーターはスコーカー同様固着で外れなかったので品番はオアズケ。リング型となっていてアルミ振動版が6mgと、リボンほどではないが軽量なのが特徴。SX-P2の20KHzに比べてSX-P1は35KHzと超高音域までカバーする。
音質は独断で。
まずはSX-P3(1978年、55000円)
オンキョーM-6のように鳴りっぷりの良さが売りではなく、音質そのものは誇張が無い。低音はボンボンする感じは少なめで締まりはある方だろう。
ボーカルが引っ込んでいるというほどではないが音のバランスはややドンシャリ、しかし高音が変に刺激的でないので聴きやすく、アッテネーターがあるので、好みでバランスをいじれる。
ボーカルの中心帯域がウーファーから出ているので、アッテネーターをいじっても変にバランスが崩れる感じはない。高音のレベルを少し下げて、その分ボリュームを上げた方が音のバランスがやや低音寄りになるけど好みだ。
今は1990年頃の中級プリメインで主に鳴らしているが、最初にでかいパワーアンプで鳴らした時よりも低音の解像度は落ちる。しかし、中高音はあまり差が出ないので大げさなシステムで使うよりも、この時代の歌謡曲やロックを気楽に聴くには良いと思う。
SX-P2(1978年、90000円)
バランスが良く癖の少ない音だと思うし大きさ重さも現実的。
総合的にはP2がベストバイコンポ(昔のオーディオ雑誌の造語だねw)だろう。
SX-P1より軽快な音だがSX-P3のようなドンシャリなバランスではなくフラットに聴こえる。
重低音とまではいかないが低音は量感もあり、この時期の物としては解像度は高い方だと思う、ボーカルの定位も良い。
今の環境だと少しアッテネーターで高音を少し落とした方が好みのバランスになるが、発売時は畳と襖の部屋が多かった時代、たぶん良いバランスだったんじゃないかと推測。
SX-P1と比べるとボーカルが薄く感じるが、貧弱に聞こえる訳ではなく繊細な中高音という印象。
フロア型の名の通り、そのまま床に置くほうが低音の量感が出る。台の上に載せると低音が軽くレベルが下がったようになり、床からの高さで音の変化は大きい。
個人的にはこの大きさの3ウェイのベスト。
なのでハマった(笑)
アンプの差はきちんと出る、スピーカーの価格に合わせるのではなく、良い物を選びたい。
低音をしっかり出したい場合は100Wクラスのアンプは最低欲しいところ。試しに球のアンプで鳴らしたら低音はややレベルが下がり解像度がぼやけたが、ボーカルは厚みが出る、まあ、それはそれで良かった。時代的にP1同様にトランジスタの出来の良いアンプが音質ではベストマッチと思うけれど、FETのアンプで中高音のふくらみを出して聴く事も多い。
SX-P1と音楽によって切り替えて使っている。主に軽快なポップス担当。
SX-P1(1976年、128000円)
高級機ですよ、って音。なんというかSX-P2よりも全体に音に色気がある。
低音にやや鈍さを感じるが、これが音楽によっては重厚感があって良かったりするので弱点というほどではない。重低音もしっかり感じる。
ボーカルは厚みがあり響きも良い、高音もきらびやかさが適度にあり上質、この中高音の良さが低音をやや鈍く感じさせているのかもしれない。1980年頃のレコードを聴くと「いいなぁ」なのだが、最近のCDやレコードの音でもさほど古臭い音に聴こえないのが不思議だ。
最近、好きなボーカルを聴く時はほとんどSX-P1。
アンプはもっと格上のスピーカーを鳴らすつもりの方がいい。
当時、この造りでは20万円以上で売らないと、、、とオーディオ誌で書かれていたのはお世辞ではないと感じる実力機だ。
能率は最近のスピーカーより高いので安いアンプでも音は出るけれど駆動力が落ちると低音は鈍さが出る。トランジスタの高級機がベストだな、アンプには響きが無くクリアーで解像度の高い物を合わせるのがオールマイティ。
FETのアンプで旧いレコードを聴くのも良いけれど、ふんわりした音になるので新しい音楽を聴く時にはアンプを替えてしまう。
球のアンプでは低音の解像度はぼやけるが、SX-P2よりも低音のレベルが落ち込まないのはエンクロージャーがでかくて重いのが効いてるのかも。BGMとして静かなボーカルを流すときは真空管の音もいい、時々この組み合わせで聴いている。
設置は床置きの石の台の上で使っている、試しに上にあげて設置してみる、なんて実験は重くて出来ん!(笑)
現在のリファレンスがテクニクスSB-MX200Dなのだが、SX-P1の中高音をアッテネーターで少し絞って帯域バランスを同じようにすると、曲の切れ目で切り替えたら判別出来ないかも?というほどに音の傾向が似ている。
SB-MX200Dは解像度が高く、カートリッジの音の差を聴くとか、音の良いCDで分析するような聴き方をするとき、SX-P1と比べれば時代の差を実感する。
しかし、音の広がりというか音場感はSX-P1の方が音源を選ばない。MX-200Dでは音の粗が目立ってしまう安っぽい音造りのロックやポップスも、SX-P1ではなんとなく聴けてしまう。
解像度で劣り定位が曖昧という事だろうけれど、音を分析するのではなく、時代を選ばないで気ままにレコードもCDも聴く時にはSX-P1に軍配が上がるか?
見た目にデカイ!という点では確実に勝ってる(笑)
当分楽しめそうです。