「西のサテン、東のグレース」といわれた。
60年代は小さな専業ブランドが主役だったらしい。私がオーディオに興味を持った頃は大小の老舗と新興ブランドの乱戦時代。
サテンは古株。コーラルはスピーカーの名門がカートリッジに参入、アントレーは新興ブランド。
サテン
1960年代から独創的なカートリッジを作っていた老舗だが、1980年代に廃業。創業者は地元に帰って、、、、と、好きな人は廃業後まで色々と調べている。読み物としては面白い、、、、かなぁ。伝記みたいな感じ。
サテンは高出力MC型なのでトランスなど要らずMMから置き換えるのが容易。針交換もできるのだが、交換針が無い。117辺りは海外でも人気があったらしく、日本とは仕様の違う針が存在する。
M-21などは中古でも高値だが、構造上の注意点(ダンパーレス?オイルダンプ?)があるようなので調べてから買わなきゃ、と思いながら買おうとしていないので調べていない。
サテンは117を2回買っている。白い丸っこいボディでカイコみたいだと言われた。
1回目は若いころ、綺麗な音だったが早々に友人に売ってしまい、次のカートリッジの資金に化けた。
2回目はまた聴いてみたくなって2000年以降に中古で状態の良い117Eを。やはり高音が綺麗だが線が細い、ヴォーカルは余韻は心地よいが音は薄い。低音は甘く弱く感じる。個体差もあるのだろうが迫力のあるタイプではなく、静かな印象。
印象的な音で、「リファレンス」と通ずる物はあるのだが、大好きとまでいかない。
コーラル
いくつかカートリッジを販売しているが、あまりメジャーにはなれなかった。
スピーカーの逆をやるだけ。という物ではないけど既に知名度があったコーラルがカートリッジを販売しても違和感はない。雑誌での評価は悪くなかったように記憶している。
1974年に777シリーズを発売。価格は14000-19000円と丸針の物はDL103よりも安価、インピーダンスは6Ω針圧1.8-2.3gと使いやすいスペック、外観はメタルケースで古いイメージ。
1979年にMC-8と廉価版の666EXに。
666EXは777EXの価格を据え置いてベリリウムカンチレバーを付けたようなもので針圧は0.75-1.5gとなっている。形状は小変更か?かなりのお買い得モデルだと思う。
MC-8は30000円、こちらもベリリウムカンチレバー、それ以外のスペックは777EXと変わらないが、ケースが樹脂製になる。当時別の物と仕様を見比べて比較検討したのだが、視聴できる店が無く購入に至らず。
当時の未練も少しあったのでMC-8を探したが流通が少なく断念。忘れた頃に見つけて、高価だなと思いつつ購入。大好きなベリリウムカンチレバーなんだが、軽針圧ではないので生かしきれてないように感じた。音はやや硬質で音粒も細かく正確な音を出すタイプ。聴感上はフラットで低音は歯切れ良い。音色は暗くはないのだが艶が少ないせいか華やかさは感じない。ヴォーカルが少々物足りないので最近出番が少ない。
アントレー
1977年からMCカートリッジを販売、新製品をどんどん出し、販売したモデル数は多くヘッドシェルや昇圧トランスも販売していた、が、今はもう無い。
最初のモデル、EC-1はオーソドックスな低インピーダンスMC型でローコンプライアンス、出力は0.2mV。
EC-15は楕円針で2万円を切る廉価モデルで話題になった。
EC-20はサファイアパイプカンチレバー。中古でも高値。これは聴いてみたいけど、ローコンプライアンスだからなぁ。
他いくつものモデルを経て、最後はEC-45。ローコンプライアンス、針圧1.9-3.1gと私の好みとは離れていった。
当時、あまり興味を引くモデルが無かったが中古相場は比較的安いのでいくつか使った。
EC-1 1977年発売30000円
最初のモデル、当時の国産品では高級機。ピラミッド型の帯域バランスで重たい低音に細身の高音が乗っている感じ。音色はやや暗く感じた。音が細かい感じはなく楕円針としては平均的、ヴォーカルは素っ気なく煌びやかでもないがオーソドックスな音として安心感はある。
手元にあるのはコンプライアンスが高めのEC-10とEC-35
EC-10
1977年発売23000円、EC-1の廉価版という位置づけ。楕円針で針圧1.5g標準とコンプライアンスはアントレーの中では高め。当時デンオンのDL-103が19000円で値引きは渋めだったので、購入時には直接のライバル、ニュースタンダードを狙ったのか?
外観は丸みを帯びていて、針カバーが跳ね上げ式なのは使いやすい、MMから移行するには価格も使い勝手もちょうど良いモデルだと思う。アントレーは昇圧トランスも販売しているが、この時期には中級機以上のプリメインアンプにMCヘッドアンプ内蔵が増えているので、こちらを狙った物だろう。気に入れば次はトランスや上級機を欲しくなる、巧妙な罠(笑)
音は元気で軽快、聴感上はややカマボコに聴こえるが高域も出ている。明るい音とは思わないが元気なので暗いと感じることもない、低音の解像度は普通。価格以上に良いと思う。
年代の新しい分レンジ感のやや広いデンオンの301Ⅱと、EC-10どちらを残そうか考慮中。
EC-35
1982年発売28000円、割安感のある値段。ボロンカンチレバーなのでテクニクス張りに良いかと思って中古で購入。1個目は方チャンネル不良、正常な方の音は良いと感じたので悔しい、きちんと聴きたくなって2年後くらいにみつけて懲りずにまた購入。
音は押し出しが強くなく、引っ込むでもなくニュートラル。帯域も狭く感じることはなく低音の切れもまあまあ。解像度はあり音場も綺麗に広がるのだが、余韻が色っぽいタイプではなくヴォーカル好きの私には少し残念。優等生的な音です。
他にも面白そうなカートリッジは多数あるけれど、情報が無さすぎると冒険。安価なら興味があればつい買ってしまうのだが、仕様からわかる事も多いので昔ほど中古カートリッジでは失敗しなくなった。
最近もMCカートリッジでは国内外問わず小さなメーカーが多数ある。前にもどこかで書いたけどMMと違って家内制手工業で作れるらしいので少数生産に向いているのだろう。最近の雑誌で見た海外の小規模ブランドは手作りしていた。
販売力のあるブランドなら自社の音のコンセプトに沿って仕様を決め、作る技術を持つところに特注(受注してもらえるならだけど、まあ予算次第でしょう)して自社ブランド品として発売もできる。
いっそ自分仕様で作ってもらうとか?←←やめとけ!いくらになるんだ!
安いものでも楽しめるが、音質の良さを求めるなら安い物を多数買うよりも、10個分20個分の予算で高級機を買った方が良い。
忘備録
EC-20は形がEC-1/10より好みだ、音は聴かないと解からんけど予算があるときに見つけたら買ってしまえ!
トランスは見えないマイナーチェンジがありそうなので慎重に。音は違うだろうけど好きな音とは限らないのですよ、他のトランスで間に合っているという現実も認識しなさい。
知らないメーカーは良く調べてから。「聞いた事あるな」っていう程度のメーカーの物を衝動買いするな!
次回、一応の最終回。