音遊び~オーディオのブログ

 ガレージで楽しむ古めのオーディオ

GOLDBUG ゴールドバグ Medusa Clement/Ⅱ Mr.Brier カートリッジの話 その20

  ゴールドバグ、最初は海外メーカーだと思っていた。

 

 1979年のClement発売から1983年のClementⅡまでわずか4年、その後ラインナップを増やすこともなく80年代が終わる頃には無くなっていた。

 

 ゴールドバグはカートリッジ専業の小さなメーカー。

 79年、デビュー作のClement(35000円)、少し遅れて発売のMedusa(29800円)

 この2機種は録音の違いに合わせた最適なカートリッジを、というコンセプト。

 81年にMr.Brier(99000円、のちに128000円に価格改定)

 83年にClementⅡ(39000円)

 

 その他に販売したのはMr.Brierのバリエーションのみ。EMT専用シェルモデルと色違いの赤いモデルMs.Brier(確か限定販売)、知っているのはこれだけで4機種と2バリエーションしかない。

 スタートが2年ほど早いアントレーは、EC-1発売後安価なモデルをラインアップに加え、昇圧トランスやシェル、矢継ぎ早なニューモデル、と常にオーディオ誌に取り上げられていた。

 廉価モデルを出さずトランスもシェルも無く、OEMで取り扱い製品を増やすこともしない、製品数の少ないゴールドバグは「そういえばあったね」程度の扱いとなり、今検索してもあまり当時の記事が出てこない。

 ちょうど、オーディオにのめり込んだ年代なので、販売開始時から気になる存在だった。

 

 販売開始順に。

 

 クレメント(Clement)

 

 「慈悲深く穏やか」「快適な」という意味を持つClement。その名の通り落ち着ける上質な音のカートリッジ。

 流通は少なくめったに中古市場で見かけない。この時期の国産カートリッジとしては高価で、メーカーの知名度もなく、ほどなくしてMedusaが発売されてからは雑誌で取り上げられることもほとんどなかったと思う。

 

 ゴールドバグのデビュー作、高級MCカートリッジとして発売。黒いボディ、ロゴは金色。自重5.6gと軽量で針圧は1.8-2.0gと使いやすいミドルコンプライアンスの物だが出力は0.1mVと低め、「従来の1/2の細い巻き線を使って」とある、振動系の軽量化を求めたのだろう。インピーダンスは18Ωとミドルインピーダンス。受け側は40Ωとなっているが私はテクニクスのトランスで30Ω受けで使っている。出力が小さいのでトランスの方が良いが、アンプ内蔵のハイゲインイコライザー受けでも高級プリメインアンプなら大きく劣らない。アームはハイコンプライアンス向けの物の方が良いが許容範囲は広く超軽量アームでなくともつかえる。

 フラットで静かな音。線の細い繊細な感じの音だが暖かみを感じる。ヴォーカルはクリアーだが適度に厚みも艶もある。音粒は細かく余韻も綺麗。元気な音の好きな人はMedusaの方が良い。

 このカートリッジを聴いて「次はこれを買おう」と思ったのを覚えている。

 

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カタログ バエス時代の物、80-11と記載あり



 

 メデューサ(Medusa)

 

 ギリシャ神話の怪物で、海の神ポセイドンの愛人であり女王という意味を持つMedusa。無数の蛇の頭髪を持ち、見る者は恐怖で石の様に動けなくなる。

 そんなカートリッジです。なわけはない。

 音楽とは関係ない名前だが存在感のある音はなんとなく合っていると思う。造りはClementと基本的に同等のお買い得モデル、本当はClementと同じ価格で売りたかったが、市場の要望で価格をギリギリ下げたのでニッキュッパになったとか?本当か???

 中古市場では一番流通が多い。評価もClementよりも良い音だから売れたとか、後発の方が良い物が出来たとか、まあ色々と言われているが、どちらか一つ残すなら私はClement。

 

 黒いボディ、ロゴは緑色。自重5.8gとクレメント同様軽量で針圧も同じく1.8-2.0gと使いやすいがミドル寄りのローコンプライアンスで出力は0.2mVとやや大きくなっている。カタログには「可動質量を重くし聴感とベスト・マッチ」とあるが、振動系で自重が0.2g増はないだろう、マグネットを大きくして出力を稼いだか?

 インピーダンスは12ΩとミドルインピーダンスだがClementよりも少し低くなった、受け側はやはりトランスの方が良いがClement同様アンプ内蔵のハイゲインイコライザー受けでも特徴的な音は楽しめる。アームの許容範囲は広く使いやすい。

 

 音質は少し元気で厚みのあるタイプ、低音の量感がありどっしりとした安定感のある音。高域も厚みはあるのだが低域の迫力が大きいので聴感での帯域バランスはピラミッド型に聴こえる。全体の解像度や余韻の綺麗さではClementに一歩譲るが、量感ではMedusaが勝る。

 

 この最初の2機種、カンチレバーと針先は共通だと思うのだが、こんなにも音を造り分けられるのかと感心する。

 カタログには「広いジャンルの音楽を平均的にしかも理想的に再現させようと試みるならば《同時に2機種のゴールドバグを求めるべき》 との1文もある。宣伝文句とはわかっているけど、片方が気に入ったらもう片方欲しくなっちゃうよなぁ。

 

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奥から Medusa、Clement、ClementⅡ

 

ブライヤー(Mr.Briere)

 

 ブライヤーはボディに使われた木材の名前。喫煙パイプ用の木として有名、やや硬く比重が重く加工は容易で多孔質、燃えにくく放熱が良い。

 発売当時、かなり話題になったウッドボディのカートリッジ。オーディオ的にどうなのかは聴いてみるしかないけれど、このなんとも言えない雰囲気を醸し出すカートリッジを眺めていると欲しくなってしまう。後に限定販売で赤ボディ(下記追記あり)のMs.Brier(15万円近かったような?)があり、実は買おうかと思った、が、限定なので買えなかった。まあ、限定だから買わなきゃ!と思っただけで、もし買えたらバイト代全部つぎ込むことになっていたので今考えると買えなくて良かったんだけど。

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2023.06 追記

 Ms.Brierは限定販売だと思っていたが、後日入手したカタログによると、木目と仕上げと形状の違い、という事になっている。だが、具体的な違いは明記されていない。

 赤ボディというのもカタログ写真では記憶違いの様だ。当時のオーディオ誌で赤系のボディで女性バージョンを限定発売するという記事を読んで、店頭で買おうと思って店員さんに確認してもらって、もう無いと断わられた記憶だったが、在庫が無いというだけのことだったのかも。

 買えなかったMs.Brieの記憶が長い間にふやけて呆けて、都市伝説の元ネタになっていっている。この記事を読んで信用した人、ごめんなさい。

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 このボディを作っていたのが有名オーディオ評論家の娘さんで、それをあーだこーだいう人もいたが、当の評論家はゴールドバグの試聴評価は辞退していた。メーカーそのものが評論家が自分の欲しいカートリッジを作るために立ち上げたといううわさもあったが未確認。ただ、後年、この評論家の愛用機材の中にブライヤーが含まれていて嬉しい気持ちになった。

 当時オルトフォンMC30並の価格で売り出したブライヤーは今でも覚えている人は多いのだろう。当時買えなかった人の僻みなのか、中古で入手して分解して中身がデンオンだとか、103の針を変えただけとか、ネット上ではMedusaと共にゴールドバグの代名詞になっていてClement/Ⅱよりもはるかに多くの無責任情報がある(笑)

 私の見解は、インピーダンスコンプライアンスも針先形状も違うのだから103とは別物。103を作って(組み立てて)いるところが、まったく同じ構造でコイル巻き数とカンチレバーと針形状とダンパーが違う物を作ったのならばむしろ歓迎したい、組み立て工程での信頼性が高いのだから。

 

 ブライヤーは一度中古で状態の良い物を入手し、聴いたけれどシェル込みの重量があるのでアームはベストマッチではなかった。ローコンプライアンスで音が好みの方向でなかったので手放してしまった、、、アームを換えて使い込んでみればもう少し面白かったかもしれないが、あまり未練を残していない。

 ふくよかだがソフトな音というほどではなく音粒も細かい。ヴォーカルは厚みは適度で余韻もある、帯域バランスは低音寄りで、高音はやや細いか。

 ファミリー内で比べるとMedusaが一番近いと思う、低音の迫力を少し抑えて繊細さを増した、といった感じか。1.3-1.7とのちのClementⅡ並の軽針圧だが、音はクレメント寄りには感じなかった。

 当時同価格のオルトフォンMC30よりも使いやすく音の傾向も違うので「MedusaとClement」で色々な録音に対応するとするなら、このクラスの物を買える人には「BrierとMC30」だと思う。

 

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Mr.Brier

 

クレメント2(ClementⅡ)

 

 私の「リファレンス」

 このネーミング、仕様を見ると別物としても良かったのではないかと思う。

Athena Elegant Fascinate Evangerion Harmony Siren 等々、神話や音楽用語からいくらでも名前はあったと思うのだけど。海外では「Ⅱ」というのはオリジナリティが無いとみられがちと聞くけれど、オーディオの世界ではオルトフォンも「Ⅱ」を多用するし、信頼性とか安心感の方を取ったのかもしれない。

 日本では無名だけど、2015年ごろに海外のオーディオショップで中古で良さそうなのが出てて、価格はオルトフォンMC30並。ちょうど予備機を確保しようと考え始めた頃だったので問い合わせようかと思ったら1週間後には売れていた。ヨーロッパではBrierとは違う意味で人気があるらしい。

 Clementが欲しかったが当時は買えず、ちょうどⅡ発売の雑誌記事を見た頃に春休みのバイト代で購入、他のカートリッジが入れ替わる中ClementⅡはずっと手元にある。

 

 83年発売、ゴールドバグの最後のモデルとなる。色がチャコールグレーになり形状が変わるが針カバーは共通、ロゴは金色でⅡの表記は無し。ベリリウムカンチレバーに特殊楕円針、コンプライアンスは17とハイ寄りのミディアム。自重5.8g、出力は0.25mVと高くなるが針圧は1.2-1.4と軽針圧なのでアームはClementやMedusaよりも選ぶ。

 

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 ClementⅡ 針先拡大 違和感感じませんか?

 針先は長方形のブロックダイヤモンドをベリリウムのパイプに「縦」に取り付け、縦はこれ以外で見たことが無い。個性的でしょ?なので、別名で良いと思うのです。

 「オルトフォンVMS その8」「ADC その18」の針写真と比べると解り易い。

 

オルトフォンの「じゃない方」 VMS-30MKⅡ VMSシリーズ カートリッジの話 その8 - 音遊び~オーディオのブログ

 

ADC XLM ZLM MC1.5 カートリッジの話 その18 - 音遊び~オーディオのブログ

 

 音質は私的にほぼ完全なバランス、だから「リファレンス」

 余韻の綺麗さ艶っぽさが良く特にヴォーカルは気に入っている。低音は解像度もあり出しゃばらないタイプで音の消え方も良くオルトフォンMC30を聴くまでこれ以上はなかった、高音は自然で音粒も細かい。

 最近のレコードを聴くには別のカートリッジも多用するが、今でもヴォーカル主体ならClementⅡの方を気に入ることが多い。色々なカートリッジを聴いてきたので部分的に「上回る」と感じるものもある。でもまあ、長い付き合いだからね。

 

 「思い出バイアス」がものすごく深い私の独断と偏見に基づく記事です、他の人にはきっとつまらない音のカートリッジなので、ヤフオクで見つけても入札しないで!

 

 忘備録

 スペアは買えたら買っておこう。

 見ると欲しくなるけどMr.Brierには手を出すな!

 Ms.Brierは高すぎて買えないだろうから見られたら幸運と思えばいい。

 

 さらに書きたい放題。

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 関連する物を見つけるとつい。。。

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