音遊び~オーディオのブログ

 ガレージで楽しむ古めのオーディオ

MMかMCか カートリッジの話、その2

 オーディオの世界ではなんとなくMCの方が偉そうだ。

 

 自分の「リファレンス」はMCだけれどMMのリファレンスも決めてあり、それ以外に気に入っている物が数個あるけれど方式はバラバラだ。

 

 大きく分けてのMM(ムービング・マグネット)とMC(ムービング・コイル)は構造の違いで、固定されたコイルで変化する磁界を拾って発電するのがMM、固定された磁界の中でコイルを動かして発電するMC、それぞれのくくりの中で多種多様。

 

 

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 シュアーM75の針違い3種とV-15Ⅲ 比較視聴用に同じシェル

 MMはシュアーとELACが特許を独占していたらしく、日本ですでにMMを造っていたメーカーは既得権(グレースやFR、テクニクスかな?)で日本国内では継続して販売できたらしいが、海外で売るには特許料をコストに上乗せすることになる、世界で売るために大人の事情で構造を変えた物も数多い。

 もうMM特許は切れているので昔話だけど、そこら辺の歴史とか覇権争いとかは誰かが詳しく書いているはずなので、興味ある人は研究してください。

 私が思うのは「シュアー、上手い事やりやがって」と、「おかげで良い物が出来たのかも?」という事。

 

 エンパイアのMI型、ADCのIM型、マイクロのVF型(アメリカで特許取得)、オルトフォンVMS型、ナガオカのMP型、等々、呼び名が違うだけのようなものが色々あるが特徴としてはマグネットはボディ側にあり磁気誘導で磁界を変化させる、重いマグネットを背負っていないので可動部分の軽量化には有利。という事はコイルを消磁するとマグネットにも影響あるかも?という事で、私は消磁しないことにしている。

 VM型はオーディオテクニカがMMのマグネットを左右チャンネルに分けてV字にした物。マグネットを2個背負うので可動部分の軽量化には不利だが、こちらはマグネットはカンチレバーについているので針を外して消磁できる。

 シュアーやオーディオテクニカなどコイルを消磁すると音がクリアーになることが多いので、中古品を入手して「なんだか元気ないな?」と思うと消磁してみる。

 MMは出力が大きい(といっても数mV)ので電圧型といわれる。負荷容量で高域特性が変わるのでケーブルを換える楽しみは大きいと思う。

 

 

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デンオン DL-103R MCカートリッジの代表格のコイルを6N銅線にしたもの

 MCは構造としてはオルトフォンタイプとそれ以外、で、オルトフォンタイプは十字の鉄心にコイルが巻いてある、程度にしかわかってないし、それ以外はどういう物なのかもよくわからない。MC型の構造にはあまり興味がないんですね。

 自分の持っている機材で使うために構造よりもインピーダンスの方を気にしている。

 オルトフォンは主に3Ω程の低インピーダンス型(概ね10Ω以下がこう呼ばれている)で低出力、受け側はアンプよりも昇圧トランスの方が良くコイルの巻き数が少ないので周波数特性では有利といわれる。そういえば特性向上のために巻数減らしたMM(低出力にはなる)もあったのでコイルの巻き数は少ない方が特性が良いというのは本当なんだろう。

 

 デンオンは40Ω程で高インピーダンス型、アンプで受けやすいがコイル巻き数が多くなるため周波数特性では高音が自然減衰するので不利な面があるらしい。

 その中間の15Ω前後は両方の良いところ取り、という事らしい。

 MCはコイルの消磁が出来ないと思っているけれど、マグネットはMMの物よりもはるかに大きいので影響を受けないから消磁して大丈夫だという意見もある。その一方で、トランスからの逆電流で消磁されるから何枚かレコードを掛ければ良いという意見もあった。言われてみると常にマグネットの近くに鉄心があるわけで、使わないで放置しておいても帯磁はするはずで、しばらく使わなかったMCが使っているうちに音が元気に出るのはダンパーが動くようになったのではなく、消磁されたのか?

 まあ、ダメになったら嫌なのでMCの消磁はやっていない。

 

 MCは電流型と呼ばれ、トランスで昇圧するのは電流を電圧に換えるという事。フォノケーブルには低抵抗の物となるのだけれど、太いケーブルは音がぼやけたりするので、トランスをプレーヤーの近くに置き短いケーブルでつないで昇圧してからアンプまでつなぐようにしている。

 

 サテンが有名だが、高出力MCというのもいくつも存在したが、あまり使用経験はない。パイオニアソニーにもあったようだしオーディオテクニカも作っていた。

 最近まで比較的安価なのにファインラインの針先をおごった物がオルトフォンにあったし、今でもSUMIKOでは高出力の方が主力の様だ。

 トランスやハイゲインアンプが要らないので気軽に使えるしマッチングの迷路に迷い込む事は少ないだろう。近年の技術ならコイルの軽量化もできるだろうから、その気になれば古き良き時代の性能を超えるものも作れるだろうとも思う。まあ、同じ技術で低出力の物を作ればもっと良かったりするんだろうけど。

 

 らしい、思う、と曖昧になるのは必ずしも考えた通りの音に聴こえないから。各メーカーさんも弱点を熟知したうえで頑張ってるんです。

 MMかMCかという事以外にもコイルの材質、マグネットの材質、カンチレバーの重量やコンプライアンス、針先形状で音が違うので「カートリッジ」という「完成品」を一つの部品と考えるのがユーザー側の「正解」。

 私の場合はカートリッジ側でなくアンプ側で考えたほうがスッキリする。

 出力が小さくて前段にトランスを置くかハイゲインイコライザーが必要なものがMC、という事で良い。トランスとのマッチングなど変化する要素が増えるのは面倒だけれど、楽しみの一つにもなるのでそれ自体はデメリットとは思わない。

 

 ただし、MCの方が使う為にお金がかかる。昇圧トランスかハイゲインイコライザーを備えたアンプ(概ね高価)が必要だ。ここら辺がMCの方が偉そうな理由かも?

 金持ってるんだよ!の、自慢???(笑)

 

 好きな音がするのが良いカートリッジで、良い方式という事です、はい。