音遊び~オーディオのブログ

 ガレージで楽しむ古めのオーディオ

針先と針交換の悩ましい現実 カートリッジの話、その3

 針は消耗品。

 

 針先は丸、楕円、ラインコンタクト(と、そのバリエーション)の大きく3つだが、その中でまた色々とある。

 丸が好きな人もいるし、ラインコンタクト系が最高という人もいる。

 私はリファレンスにしている物がMM/MCともに楕円なので、楕円が好きという事になる。

 

 丸針は太さで印象が違ったり、無垢ダイヤモンドは一味違うとかある。周波数レンジが狭く音粒が荒く感じるので高音質とは思わないが、丈夫でトラッキングエラーの影響も受けにくいので安いアームでも結構いけちゃうのが気軽でいい。自分にとってはそういう位置付けなので最近の高価な社外無垢針に魅力は感じない、昔の針のままで使っている。どのメーカーもエントリーモデルは丸針、BGM用にいいな、とか、古いレコードに合うな、とか、音色の違いも当然あり元気いっぱいな音の物も静かな印象の物もある。

 楕円針は音質も価格も幅ひろい、やはり接合針より無垢の方が良い。楕円の縦横比によっても音が違う。丸針よりも周波数レンジが広く音粒が細かくなる。元々丸針モデルのグレードアップとして楕円針が設定されている程度の物ならばそこそこ良いアームの付いたフルオート機でも不安なく使える。無垢楕円を使い造り込まれた高級機ではラインコンタクトに負けない音を出すものもあり、こういうのが一番好き。

 ラインコンタクト系は高価格帯が主となるので多数派ではないが音質は多種多様。普及モデルに針先だけみたいな使いやすい物もあるにはある。が、各メーカーのフラッグシップとなっている物が多く、そういうモデルはメーカーの顔、音質自慢でそれなりの機材を要求する。使いこなしも設定にシビアでレコード内周でノイズっぽさが出やすかったり、ユーザー側にも要求が大きくなる。上手く鳴らすとレンジの広さ、音粒の細かさ、艶っぽさ、煌めきなど、魅力的な音を持っているモデルが多い。

 

 針の違いはMMならば気軽に針交換して楽しめる。

 

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グレース LME だったかな。同じボディで3つの音を楽しめた。

 グレースではメーカー自らが針交換を楽しんでくださいと上のようなセットを出していた。針先形状はLとMは同じだがカンチレバーやダンパーの違いで音造りがちがう、Eはハイコンプライアンスで針先も違う。本来はそれぞれ専用ボディとなっているが互換性があるので標準ボディで針先交換するだけで楽しめる。

 シュアーのM75は丸、楕円、ラインコンタクト(ハイパー・エリプチカル)が同じボディに使えた。

 

 私は基本的にオリジナル針とメーカーのバリエーションで充分と思っている。

 カートリッジをいくつか併用しているから今持っている物は今後もすり減ることはないだろう、針交換が必要になるのは手を滑らせて折ってしまうか、ダンパーの劣化で聴けなくなるか。

 

 古いMMカートリッジを使っていて、針交換しようと思っても店がもうないし、メーカーもなくなっているので針が無い!となる。まあ不便だがMCよりも「針交換できる」というメリットは残っている。

 気に入っていている物はヤフオクやネット通販で見つけスペアを購入したりしている。特に普及価格帯の中古カートリッジは現在の社外新品針よりも安いので丸ごと買ってもいい、その場合オリジナル針の物を選ぶ。交換針だけ買うならできるだけメーカー純正を探す。

 針折れのMMカートリッジを入手してしまうとせっかくなので音を聴いてみたくなる。なにか感じるモデルでないなら社外品にまで間口を広げれば交換針が見つけやすく古い物が安価に見つかることもある。上記のグレースやシュアーの様に互換性のある針にも期待できる。問題はメーカー純正とは仕様が違う交換針も多数存在することだ。無垢ダイヤのモデルに接合針は当たり前で昔の社外品は定価設定自体安価だった事を考えるとこれは許容するべきかな?と思うが、日本の社外メーカーでも楕円針モデルの交換針に丸針を平気でラインナップしているからオリジナルに近い音を聴いてみたい時には要注意だ。

 過去の印象からナガオカが好み、JICO(旧スイング、現在は最大手か?)やAPIS(旧KOWA、すでにない)なら針形状を納得して買うなら品質はまあ安心、それ以外にも日本の古いブランドや海外の社外品メーカーなど色々あるが、物によっては元々出来が悪い物もあるようなので、ヤフオクで見つけるとその都度検索。まあ、安ければ買っちゃうし、他になければ「勝負!」する(笑)

 

 当時物の古い針でも超ハイコンプライアンスの物(社外の安い針は元々ハイコンプライアンスに作ってない取り付け可能なだけの代物も多い)でなければ、ダンパーも概ね大丈夫だ。天然ゴムを使っていた時代があるのかどうかは知らないが、折れた針を分解してみると70年代からの普及価格の物はみなシリコーンゴムのダンパーばかり、紫外線が直接当たらない取り付けパイプの中ならば劣化はほとんど無いといえる。

 超ハイコンプライアンスの物でウレタンゴムだったりするとこれは加水分解していくので保管状態が悪いと使い物にならないけれど、手持ちの中古でも状態が良い物もあるので、未開封新品ならまず大丈夫、と、信じて買う(笑)

 

 中古、新品問わず、当時の針でダンパーの劣化が硬化の方向で、鳴りっぷりが悪いとかノイズっぽいなどあったとしても、経験上しばらく動かせば綺麗な音になることが多い。私はフルオートプレーヤーのリピートモードでかけっぱなしにする。アンプの電源を落として一晩中とか。レコードは中古で買ったボレロ、色々な音が入ってるので馴らしにはちょうど良く、復活の確認にも最適だと思う。

 柔らかくヘタってる場合は、、、、、諦めて廃棄する。

 

 稀なモデルで社外でも交換針が見つからない場合、それなりに対価を払うならばダンパー交換(テンションワイヤーが付いていると難しいかも)して修理する業者もいるようなので、元と同じ音になることはない前提なら検討するのもいいかもしれない。

 完成して帰ってくるときっと凄い良い音だろう、が、そのうちプラシーボが切れて、、、、、(笑)特別な思い入れがあるモデル以外では無意味と思う。

 

 MMで需要が多いモデル用なら今でも生産されている。

 JOCOでは最近、シュアーやテクニクスの現存数の多いモデル用に、針形状、カンチレバー、限定販売でノブの材質、等いろいろなバリエーションの物を作っている。

 昔の針価格を知っているので今は高くなったな、と感じるがどんどん適合機種が増え、別バージョンの針なども出てくるので、ベースのカートリッジは安価だから手を出しやすいし、状態のばらつきが多い当時の中古品と違って新品針という安心感も手伝って楽しんでいる人も多いのだろう。

 

 古いMCの場合は少々困った状況だ。針交換できないので使い捨てが基本(それを嫌ってかMMの様に交換できるものもあるが)だし針の違いを楽しむには同じモデルの針違いを買うしかないが、メーカーは色々と作っていなかったのが現実。

 昔交換が設定されていた場合はメーカーが古いのを下取りして新品交換、デンオンやオルトフォンは今でも古い物を下取りして新品を割安に供給してくれている。偉い!

 しかし、当時のメーカーの多くは既にないし、現存メーカーも現行モデルへの交換となる。気に入った古いモデルを使っているともう諦めるしかない。仕方なく同じものの中古(稀にデットストック!)を再購入することになる。どうしてもコレ!でないなら聴いてみたい別のモデルにするのも楽しい。なんでも買うわけにはいかないので厳選して買うのだが調べて悩む時間も楽しいものです、はい。

 経験上ダンパーはMMよりもMCの方が生きている。コイルがカンチレバーについているので構造上振動系質量がMMより大きいから極端に柔らかいダンパーを使ったものは少ないのだと思っている。ハイコンプライアンス全盛期の空芯コイルの物などは危険度が高いのかもしれない。

 

 どうせ新品交換できないなら、、、という事で針折れの古いMCカートリッジにカンチレバーごと針移植してもらうというのをいくつかやってもらった。MMは大量生産向きだが設備投資が必要、MCは「家内制手工業」でも作れると聞いたことがある。昔の機械と職人が残っていれば古い構造の物ならばコイルの巻き直しなんかもできちゃうような気はする。

 元の音と同じにはならない前提なら「オリジナル仕様」のカートリッジを造れるという事です。MMとは違いカンチレバーと針以外はそのまま使うのでここが使えるのが必須条件、手作業でコストもかかるから安物のカートリッジをベースにするのは避け、できるだけ自分の気に入っている物をベースにした。

 

 面白くていくつか依頼したので、新品のDL-103を買えるお金を使ってしまったが趣味で普及価格帯にはしるのもねぇ、、、と自己肯定(笑)

 往年の名機を別物として蘇らせるのもハイリスクだけど楽しみは大きいのです。