音遊び~オーディオのブログ

 ガレージで楽しむ古めのオーディオ

カンチレバー周り カートリッジの話、その4

 好きなカンチレバーベリリウム

 

 けれどカンチレバーの素材だけで音質が決まるわけではなく、ダンパーや針先形状、MMならマグネット、MCならコイル、それらの装着位置や材質など音の変わる要素はいくらでもある。

 そもそもベリリウムは毒性があるので今は使わない(使えない?)。同時期に出始めたボロンは今でも使われているので、新製品でも時々見かける。

 アルミ、チタン、ボロン、ベリリウム、と、1970年代から軽量高剛性を求めて色々なものが出てきた。

 軽量でもダンパーが硬ければ動きは鈍い、動かすためにダンパーを柔らかくして、位置決めがあいまいになって解像度が落ちるのでテンションワイヤーで後ろ側を固定して、、、、がむしゃらな感じもする。

 宝石系の多くは無垢の「石の棒」で剛性重視だったのではないかと思う。軽量そうなのではサファイアパイプ(どうやって作るんだろ?)があったはず、今もあるかな?

 自分の「リファレンス」のMCカートリッジがベリリウムカンチレバーなのだが、オルトフォンのMC30(アルミカンチレバー)を中古で入手し聴いてみると甲乙つけがたい。コイルの銀線によるところも大きいかと思うけれど、低音の解像度や音の煌びやかさはMC30の方が上回る。まあ当時の定価が2.5倍くらいなので良くなきゃ悲しい。

 カートリッジ修理をお願いしている主治医によればオルトフォンのアルミカンチレバーは日本の物よりも硬いとの事。アルミも合金が色々あるので、使い方次第なのだろう。

 昔のMMの安い社外針は純正針よりも太いカンチレバーが付いていることが多い。「安くて太い」で強度を保っているのか振動系の軽量化よりもコスト優先だと思うけれど昔のSWINGの「テーパードカンチレバー」なんて見た目にぶっといアルミパイプだがファンも多かったらしく、気になって一度使ったが音粒は荒く感じるけれど元気な音だった、私好みではないけれど、こういう音が好きな人もいると思う。

 アルミの音が悪いわけでもなくマイクロのVF-3200やグレースF-8Eのクリアーで伸びやかな高域はベリリウムやボロンでも出ない物は出ない。アルミカンチレバーのオルトフォンMC30は別格の音でベリリウムの「リファレンス」を凌ぐところがある。

 

 MMなら適合する針があれば差し替えて音の違い(ダンパーやマグネットも変わるので単純比較できないけど)を楽しめる。グレースのレベルⅡだと思ったけれどカンチレバーが数種類あったはず、その時期オーディオから離れていたけれど、色々と聴き比べたら面白かったろう。

 テクニクスが高級機にボロンカンチレバーを好んで使っていた、これは気に入って「MMのリファレンス」にしている。他にもボロンのMMは聴いたがテクニクスが最高だと思っている。

 テクニクス以外の好きなMMはオルトフォンVMSもエラックもADCもアルミカンチレバーだ。

 

 何が良いんだかわからなくなってくる。

 

 ベリリウムの物は、どちらかといえば小規模メーカーに多い、入手性などの点から大手メーカーでは採用しにくかったのかもしれない。

 ボロンはボロンッ!と折れ、ベリリウムはベリリッと折れる、などど脆さを揶揄されたけれどどちらが脆いんだろう???

 

 針先の形状が変わることも多いので単純にカンチレバーの違いによる音を比較するのも条件が難しいけれど、いくつかの針折れMCカートリッジを再利用した中には上手くいったものもある。

 元々もったいないから直せるなら楽しみたいという動機なので、良いところが出てもオリジナルと比べて失う物もある前提で修理を頼んだ物。

 こういうのは一概に「良くなった」とは言えないと思うけれど、好みの方向になった物が2つ。

 

 その1

 

 アルミ、楕円針⇒ボロン、楕円針

 ベースはロー寄りのミディアムコンプライアンス、ミドルインピーダンスのMC。常用機の一つでもある。

 元の音は「リファレンス」に比べるとやや音粒が荒く余韻は少なめ、低音は量感があり鳴りっぷりが元気な方で帯域バランスはやや低音寄り。

 交換後は低音の解像度がやや上がり、中高音の音粒がリファレンス並みに繊細になり余韻も出る。鳴りっぷりの元気さはややおとなしくなるが音の厚みは保たれていて、全体にはリファレンスより艶やかさが劣るけれど代役ができる程に好みの方向になった。

 

 その2

 アルミ、楕円針⇒ルビー、ラインコンタクト

 元の音は「リファレンス」と同傾向でやや音が薄い感じ、艶っぽさもありかなり好きな音。

 交換後は低音の解像度が上がり透明感(低音の形容詞に使うと思わなかった)がでて全体にクリアー、特に音がスっと消えていく感じが良い。元々の音の薄い感じは残り、厚みでは「リファレンス」だが、この「音の消え方」と「透明感」を持ち艶っぽさもあるとなると、、、、、

 針形状も違うとはいえ総合的には「リファレンス」との甲乙はつけがたいレベル。特に低音はやや薄い感じがある以外はリファレンス以上に気に入っている。

 値段とルビーのプラシーボでしかなくそのうち醒める、ではない事を祈る(笑)

 

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ルビー。こんなに細く加工できるものなんだな

 MMカートリッジにはルビーやサファイアカンチレバーを使ったJICOのSAS(ラインコンタクト)針があるので容易に比べられるのだけれど、価格は容易ではない(笑)

 プラシーボでなかったらテクニクス205用を入手して205C2Lのローインピーダンスボディと205C3のボディに装着して聴き比べてみたい。

 しかし針先もラインコンタクトに変わっているので「ルビーカンチレバーがいちばんだ!」とは言えないよなぁ、お金かかるしあまり深く入り込まないでおきたい。

 

 なので、好きなのはベリリウム。今後作られないなら移植もできない、散財しなくて済む(笑)