音遊び~オーディオのブログ

 ガレージで楽しむ古めのオーディオ

カートリッジ側から見たトーンアームの重要性 その2

 アームの良さは仕様の数値だけでは解らない。

 

 理論的な事は私なんかよりもずっと詳しい人が書いているので、興味のある人はそちらを読んでいただくとして、自分の頭の中を整理するために書き出してみる。

 

 仕様が発表されていて解りやすいところでは

 実効長

 まあ、長い方がトラッキングエラーが少ない。という程度に理解。長い分重くなるのでメリットばかりではない。

 

 初動感度

 アームの感度、小さいほど高感度で反応が良い。テクニクスとパイオニア以外はあまり公表してないように思う、必要充分であれば他の要素の方が重要かも。

 アナログ全盛期の1970年代後半には中級機で7mgも当たり前だった。今では高騰しているテクニクスEPA-100(Ⅱ)ではサポートベアリングにルビーボールを使って5mgとなり当時突き抜けて高感度。

 現行のSL-1200Gは精度向上で5mg(宣伝効果ばっちりだね)、最近のカートリッジ使うならこのアームが一番か?

 

 私の場合はこの2点の他に構造、外観、材質、そして適合カートリッジ重量などから「慣性質量」「ダンピング」を推測する。単品アームなら取り付けベースの剛性なども考慮する。

 そうやって、グダグダと考察を楽しみながらアームに使える(アームが使う事のできる)カートリッジを選ぶ。

 

 カートリッジが理想を求めてやりたい放題をやると、トーンアームを合わせこまないと使えない。グレース、オルトフォン、ADCなど、自社ハイコンプライアンスカートリッジの専用アームを作っていた時代があり、理想的なのだろうが汎用性は無い。

 そうやってやり過ぎた時代の後でテクニクスが提唱した(はず)の「T4P」は全部ではないがカートリッジ側の規格がより明確なのでトーンアーム側への要求が減る、という事はユーザー負担が減る。大手カートリッジメーカーも乗っかってきたので主流になるか?と思ったらCDの時代になってしまい、主流とはならなかった。

 まあ、オーディオは趣味なので、安いとか簡単とかが最重要じゃない。

 

 現在のカートリッジはコンプライアンスを公表していない物が多いので、適正針圧で判断することになる。現行テクニクスに採用されているオルトフォン2MーREDで針圧1.8g、シリーズ上位モデルでも針圧1.5g、使いやすい針圧で無理が無い。トーンアーム側もそれに対応する仕様なのだろう。古いテクニクスのカートリッジも一部高級カートリッジ以外は同様の仕様で使いやすく中級機までのアームも当然そこに合わせてあったが、上級機には別のアームを設定していた。

 オルトフォンが昔の型番を復活させて新しいアームを出すけど、写真で見る限りおそらくこの辺りに合わせたアームだろう、現在の自社主力モデル(SPU除く)に合わせれば当然そうなる。じゃあテクニクスで良いんじゃない?と考える国産至上主義w、同予算ならアーム単体よりSL-1500Cが欲しい。
 
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2023.08.17 追記

 オルトフォンのアーム、既に販売開始していました。

 シェル込み最低重量が18g、重量ウエイトを使えばSPUにも対応できる。。。

 良く言えば王道、悪く言えば中途半端。このアームにそそられないなぁ。価格はSL-1500CどころかSL-1200Gも狙えそうだし。

 SPUにはこのアームじゃないでしょ、SPU使えるようにするために妥協しまくりじゃない?デンオンのDL-103を諦めたアームが急に魅力的になったのを思い出す。

 

 この予算があるなら中古のEPA-100とEPA100Mk2、両方狙うな。

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SL-1500C 宣材写真です

 ミドルコンプライアンスのハイ寄り、針圧で1.5gくらいというのは、アームへの要求も極端な物でなく、多種多様なカートリッジがあり、かなり良い音がする。アナログ不遇の時期を超えて、自然とこのあたりが「主流」になったのだと思う。

 このあたりの仕様だとシェル付S字アームの出来の良い物で楽しめる、中古レコードプレーヤーもS字アームの方が人気。そのせいか単品アーム用のストレートアームパイプが比較的割安に買えた時期がありだいぶ揃えたが、5年早ければもっと安かった(笑)

 

 トーンアームというカートリッジを支える棒を判断するには、他にも良くわからない、比較しにくい物がたくさんある。

 方式や材質や構造で色々と変るもので、数値化できない物は仕様書では比較しようがない、妄想してカートリッジに合いそうなものを選ぶしかない。

 

 サポート方式はジンバル型が多いが、他にもナイフエッジとか、ワンポイントサポート等。SMEはナイフエッジなので良いとか、サエクのダブルナイフエッジが最高とか、「ナイフ」という響きが男心をくすぐるのか信奉者が多い印象。

 

 針圧のかけ方では多くはスタティック型、シーソーの片側に重さがかかる重力式で本体が水平である必要がある。

 アームの針側をバネで引っ張るダイナミック型もあり、こちらは重力に左右されない(という事になっている)のでプレーヤーを縦にしても使える。こちらの方が良い、と説く文章を見たことがある。力説してあり読んでいると良いと感じる(笑)

 

 ダンピングはアームの設計時に決まるが、これをカートリッジに合わせるために可変式のオイルダンプとする物もある。グレースやオーディオクラフトのワンポイント型はオイルダンピングの可変式、前述のテクニクスEPA-100も可変してカートリッジのコンプライアンスへの適合を広げているし、パイオニアではPL-30/50/70でダンピングできるアームを完成品のプレーヤーに採用。

 

 アームをカートリッジを生かすものと考えると、まずは使いたいカートリッジが求めている物は何かを考えなければならない。

 

 できれば1本欲しいと思っているけど、使い道が無いので思いとどまっているテクニクスEPA-100(Ⅱ)。S字アームなので使いやすくカートリッジの適合範囲も広くハイコンプライアンス向け、(Ⅱ)の方なら軽量でより一層ハイコンプライアンス向け。

 ある意味、S字アームでの究極のトーンアームだと思っているので物欲は刺激されるんだけど、さりげなくこの高性能を使うような大人に自分がなってないんだよなぁ。

 EPA-500系を所有していて、そこそこに使うS字アームはやや初動感度が劣るEPA-250でも充分かなと思ってしまう。シェル無しのストレートアームの方がハイコンプライアンスカートリッジにはより良いと思っていて、ウエイト一体型のストレートアームには適合コンプライアンスがいくつか設定され、それぞれにアームの太さや重量、リアウエイトのダンピングも作り分けるという凝った物として存在するので、ハイコンプライアンスを突き詰めるなら初動感度が劣っても総合的にEPA-100(Ⅱ)よりも良いと考えている。

 

 アームは難しいねぇ。

 

 オイルダンプは「鈍い」という否定意見を書いている人がいた。そうかも?って、これは慣性質量とダンピングをごっちゃにしてないかい?。

 ワンポイント型は初動感度が悪い、という意見もあった。そうなのかぁ、と思うけど、計測データが見つからないから何とも言えん。

 ジンバルサポートのようにベアリングで支えるよりもワンポイントの方が良いという意見もあったし、剛性があるナイフエッジが良いという意見もあった、ゼロバランスとってフワフワ動かしてみるとそうとも思えなかったけどなぁ、ダンピング無しで考えると支持方式よりも慣性質量の影響の方が大きいと思う。

 数学の上ではワンポイントは「点」なので接触面積はゼロ。ナイフエッジも「線」なので長さはあるが面積はゼロ。実際はゼロじゃない、充分に小さければ良しとするしかない。

 ナイフエッジは充分な長さが無いと荷重の偏りをいなしきれず感度が安定しない、かといって長くすると重く鈍くなる、はずだ。

 ワンポイントはアームの支点と針先の位置が同じ高さでないと針先からの入力でラテラルが不安定になるので正確にトレースしているとはいえない、というようなことをどこかで読んだ。

 そうやって粗探ししていくとジンバルサポートは剛性といい安定度といい軽量化のしやすさといいとても良い構造だ、だから多いんだろうけど。

 結局完全な物は無い、全部に弱点があるので使用目的に合ったトータルバランスが最重要。

 

 上記をふまえた上で今のところメインシステム用のアームはオーディオクラフトのAC-3000MCが自分の要求を一番満たしてくれると思っている。

 その理由はシステムトーンアームだという事。豊富なアームパイプとウエイト、そして調整式オイルダンプで多くのカートリッジの性能を引き出せる。使っていて感度が低いとは思わないし、慣性質量を小さくしたままでダンピングを効かせる事が出来るというのは他のアームでは得られない楽しみだ。パイプ交換するとラテラルも針圧も高さも調整しなきゃで面倒くさいけど、解っていれば難しくは無い。カートリッジごとに設定や適合パイプの資料があり、それが理詰め感ばっちりの秀逸な物で、弱点隠して盲信させようという「パラノイア」感が少ない、これ、重要。

 ロングアームの4000シリーズはスペースの都合もあるが使いたいカートリッジとのマッチングを考えるとそれほど魅力を感じなくなってきた。

 

 EPA-500系は現愛用機。適合するアームパイプにカートリッジを取り付けて複数用意しておけばウエイトごと交換するのでカートリッジ交換時の針圧調整も不要で高さ調整だけ、それもベースを回すだけで使いやすさは最高。

 必要なアームをそろえるのが今では大変だが、だいたい揃ったので不満はほとんどなく今もずっと使い続けている。けれど、ダンピング調整が出来ればこのカートリッジはもうちょいいけるはず、と感じる事が時々ある。じゃあEPA-100系は?となるけど、ストレートパイプで聴くリファレンスカートリッジの音には届かないだろう。

 

 オーディオクラフトAC-3000MCはバイト頑張って購入した40年来の愛用品なので、「初恋バイアス」が強いんだよね。早く復活させよう、もたもたしてると細かな調整が難しい年齢になってしまう。

 

 そして老後はSL-1500Cでミドルコンプライアンスのお気に入りカートリッジで楽しもう。