音遊び~オーディオのブログ

 ガレージで楽しむ古めのオーディオ

パイオニア PD-T07HSLimited CDプレーヤー PD-Tシリーズとレガートリンクの仲間たち

 CD信号面を上にしてターンテーブルに乗せるのが特徴のシリーズ。後期のモデルからはレガートリンクも特徴、このシリーズは複数を長らく愛用していた。

 

 中古で安価だったT04の音に可能性を感じて、T05、T06、T07A、T07HSLimited と使って、T07HSLLimitedは複数所有し長い事楽しんだ。孤高の最高級機09には至らず、残念。

 

 価格だけでなく時代で音質は違うので好みもあるからこれが一番というものでもないけど、個人的にシリーズ最終モデルのPD-T07HSLimited(1996年、22万円、限定2700台、限定感は少なめw)最高。この最終モデルはバランス接続が無く、ほとんどの機材をRCAで使う私には良かったけど、バランス接続でやっていたらひとつ前のT07Sの方が最高かも?

 レーザーディスクで光ディスクの技術があったパイオニアはCD初期から存在感を示していて、PD-Tシリーズ以前のモデルのファンも多い。私は当時学生でCD専用に高級機を買う事は出来ず、映像への興味もあってパイオニアのデカくて重い複合機でCDを聴いていた。

 

イオニア PD-T07HSLimited

 

 まず蘊蓄。レガートリンクってなによ?

 

 CDは規格で20Hz-20KHzの録音再生帯域で、これは当時規格を決めた人たちが人間の可聴帯域をこれで充分カバーできるとして決めた物。ちなみに録音時間が74分とアナログレコードLP両面よりも少し長いのはカラヤンの意見でベートーヴェン交響曲第九を途切れなく聴くためといわれているけど、実際の演奏では60分台らしい。

 もう一回り小さく10Cmでは当時は無理だったんだろうな。11Cmでなんとかいけるけど、12って数字は1ダース、ヤードポンド規格の国では分母、なじみが良い、これでいこう!(妄想です)

 製造工程の不良率下げるために余裕もって74分、後に同じ大きさのままで少しデータ密度上げて80分。

 

 商品化するには「規格」は大切でシンプルな規格(曖昧でもある、後付けでドルビー付けて録音しても古い機械で周波数特性はともかく音はでる)のカセットテープは世界を席巻したが、民生用ビデオテープでは規格が乱立しユーザー側は混乱する。

 V2000「でかいけど高規格、PALに対応できる画質の良さ、カセット規格制定の雄フィリップスらしくひっくり返して使える、個人的にはこれが世界標準になれば良かったと思う」

 ベータ「VHSより高規格でテープも小さいが製造技術はより高度で当時発展途上国のメーカーが採用を躊躇した」

 VHS「ベータの一年遅れで発売、技術力に劣る発展途上国メーカーも巻き込み一大勢力に」

 当初はベータがリードしたが巨大なアメリカ市場に「安く」売るには簡単に作れる方が良い。最も「造りやすい」VHSが安価なため、ダビングエロソフトによって普及競争に打ち勝つ。パソコンもインターネットでエロ画像見放題というのが爆発的普及の理由の一つだし、エロは侮りがたい。

 8mmビデオで規格統一され、デジタルビデオとなり、メモリー記憶容量が増えて

テープはいらなくなり現在に至る。

 

 大きく脱線した。規格絡みはソニーのネタで書くべきだったな。

 

 この「ビデオテープ負け組」のソニーとフィリップスが組んで「カセットのようなみんなで楽しめる物を!」でデジタル音源を規格制定したのがCD。フィリップスだけでも良さそうだけど大きさで失敗した経験から、カセットで活躍しウォークマンで既に知名度は「世界のソニー」の小型軽量化の「技術の目」は必要だったろう。

 レーザーピックアップで信号面を読む技術はパイオニアレーザーディスクで既に市場に出ていてそちらがアナログ信号であることを考えるとデジタル信号の方が読み込み自体は楽だろう、後は信号の規格を決めるだけ。読み込みエラーが半分くらいあっても強力な誤り訂正回路で補完して音が出るらしい。当時考えうる最高のものが出来た。

 規格が決まれば仲間を増やして作って売ればみんなハッピー。あまりにも普及したので、MDと違い今でもハードウェアがあるしSACDなどどいう上位規格が出来たり、広い意味ではDVDは映像対応派生規格ともいえる、こちらは高画質版(ブルーレイ)で少し規格割れが出たものの、12センチの光ディスクはなんやかやで音声映像共に生き残っている。

 

 発売後、短期間にその良さは周知される。低音の再生はアナログレコードの比ではないし、針がゴミを拾うパチパチ音は無く、カセットテープよりも広帯域、S/Nも良い、選曲も簡単。振動にも案外と強く、舗装路を走る車でも使える。「小ささ」ではソニーディスクマンウォークマンユーザー層を取り込むし、オーディオ好きにもシステム内にあるのが当然のメディアとなる。量産、価格低下、普及、更に価格低下、ドンドンン普及。。。

 

 で、ひとしきり普及して色々と試した頃にうるさい人が言い出すわけだ。

 アナログの方が良い。と。

 規格で捨てたところにはパイプオルガンの重低音がある、倍音成分がある、と。

 私も現実はともかくアナログレコードの規格は周波数制限が無いので精度がどんどん上がっていけば無限の可能性がある、とは考える。ディスクの材質や針の精度やアーム等々、現在の最高の技術で作れば100KHzくらいいけるんじゃね?いってどうする?

 

 このCDでは出てこない可聴帯域外の音成分を可聴帯域の音から「合成」して足してやる、というのがレガートリンク。面白いな、と思った。

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2024.03.29 追記

レガートの意味:(legato) 演奏用語。音と音との間を切れ目なくなめらかにつなげて演奏すること

 録音信号波形は、デジタルは細切れ、アナログは連続。上手いネーミングだと思う

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 当時CDプレーヤーをとっかえひっかえしていて、安いPD-T04の音はショボいけど耳に当たる嫌なところが無くふくよかさがあるな、と、ソニーナカミチにはない良さを感じた。そしてどんどん上位モデルに手を出し、07HSLimitedに行きつく。

 当時はCDプレーヤーはそろそろ終わりの時代、CD専用機は売れ筋ではなくマイナーチェンジは04→04Sと07→07A→07S→07HSLimitedと全モデルがアップデートされていない、Limitedが限定なのも、案外と高級機需要があるから作って売ってきたけど、初期モデルデビューから6年、いくら何でも引っ張り過ぎ、実質「我が社の最後の高級CDプレーヤーだよ」ってのが現実だろう、買う方も解って買うし、テクニクスなんてもっと前から高級機は受注生産だった。

 

 この合成して作った音を追加して「良い音」を作り出す方式は世代を重ねるごとに、より洗練されて自然に感じるのでもう少し後の時代のDVD対応のターンテーブル方式でない高級機でも少々劣る部分もあるけどこれでいいな、と思えてしまう。

 パイオニアでは07HSLimited同様のレガートリンクSがDVDプレーヤーでも採用されていて、CDのオマケで付いてくる今では絶滅規格のCD-Vや最近ならオマケDVDなどの音楽を聴くためにパイオニアのDVDプレーヤーDV-S9(1997年、定価19万円)も使っていた。ターンテーブル方式じゃないけど、でかくて重くて高級オーディオ機のような造りだけあってCDプレーヤーとして使っても音が良い、ふわりとした広がりの「わざとらしさ」はPD-T07HSLimitedよりもこちらの方が控えめに感じた。DVDは国や地域ごとにリージョンコードがあり海外版のDVDソフト(エロじゃない、念のためw、映画もアニメも海外版の方が日本よりだいぶ安かった)は認識しないのだが、海外向けモデルと基本的の共通なのでリージョンフリー化はわずかな配線追加で改造する事が可能で改造後に長い事使っていた。

 オーディオ機器とは違ってAV機器で5.1チャンネルが当たり前になった時期には2チャンネルAV機器なんて旧モデルでしかない、でかくて重くて低機能(笑)リージョンフリーでない事も理由なのか中古市場で安価だったのだが、最近ハードオフで見かけたら動作品はだいぶ値上がりしてた。。。

 

イオニア DV-S9 でかくて重くて銅メッキシャシー

 楽しかったな。

 

 アナログ回帰して楽しんでいる今では「CDの音がつまらない」と言われ始めた頃のパイオニアなりの回答だと思っている。

 1990年頃にアナログの音源をCDにした物を楽しむには良いけれど、CDの時代の音が熟成されてきた音源だと、余韻がわざとらしくもある。CD専用機としては徐々に別のモデルを使うことが多くなり、今ではPD-Tシリーズは皆手放してしまった。

 

 サブシステムで今も使っているDV-AX5Avi(2005年20万円)ではレガートPROとなっている。

 DV-S9以降複合機はずっとパイオニアなのだが、レガートリンクの採用が無くなったのに改めてレガートPROとして復活し、DV-AX5AviではOFFもできるしモードも選べる。音質の良いCDならばOFFが良いけど、古いCDでは上手く使えばより楽しいし、映像付きの場合はそちらに合わせて選べるので便利。SACD対応のCD専用機でも同様の物の様だ、ちょっと気になる。

 デジタルエフェクトならば過去のレガートリンクとは回路は違うと思うけど、音をいじるという広い意味では同じだし、CD専用機最後の世代として今も人気が有るPD-Tシリーズでのイメージを上手に利用しようという事だろう。

 実際に使ってみると、正直なところPD-T07HSLimitedほどの音粒が細かい余韻という良さはない(確かアナログ回路にA級アンプ採用とか、やり過ぎ感たっぷりだったはず)が、音場を広げる(ぼやけさせる、ともいう)効果が選べるというのは所詮エフェクトと考えると便利な方が良い。そして「OFF」時の音がすっきりと解像度も高く不満はない、不人気で売れなかった高級機だがCDプレーヤーとしての基本性能は価格なりにきちんとしていると思う。

 

 

 次のマルチメディアプレーヤーもレガートPRO搭載機かな?